侵略者ガバナス人に要塞化された惑星ジルーシア。現地人たちは助けを求め、勇者の印となる木の実を宇宙へはなった。
しかし木の実がたどりついた地球は戦争が終わってひさしく、暴走行為を楽しむ若者たちは戦いかたを知らなかった……
1978年の東映が、『スターウォーズ』1作目の日本公開前に急いで作った便乗SF映画。深作欣二監督を始め、『柳生一族の陰謀』を作ったばかりのスタッフがスライドした。
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東映なりに大作らしい製作費を投入しているが、もちろん『スターウォーズ』に映像面では遠くおよばない。
序盤のジルーシア人の会合からして、せっかく巨大な地表セットを作っているのに、背景のホリゾントが絵にしか見えず、まるで舞台劇のよう。宇宙空間で宇宙ボタルをつかまえようとする場面でも、酸素マスクだけをつけて素肌はさらし、泳いで移動するというアンリアルな描写だった。
ただ、地表におりた複数の宇宙船セットを実物大でつくったり、ジルーシアの要塞部分を大規模なミニチュアセットで表現したりと、東映の特撮映画と思えば見どころはある。要塞内部へ宇宙船で突入する展開などは『スターウォーズ』3作目に先行しているし、その描写も合成とミニチュアを組みあわせてうまくできている。千葉真一を擁する剣戟アクションも荒々しく、旧3部作の『スターウォーズ』よりも一面では優れていた。
また、『スターウォーズ』に『里見八犬伝』を混ぜて、約100分間に戦いの終結までを短くおさめた物語も意外と悪くない。あちこちから節操なく臆面もなくパクれば、結果として新しい味わいになるのだ。
まず助けを求める勇者の数が多いだけに、どのキャラクターが勇者なのかが意外と予想しづらい。勇者が戦いを拒絶したり、それどころか悪事を働いたりと、批評的な展開で事態が変転していく。敵側を完全な悪役として設定しているかわりに、味方側が混迷するドラマが濃厚に描かれた。
最後の惑星間戦争が終わって長いために地球がガバナスの侵略に対抗することが難しく、少人数の勇者が奇襲するしかないという流れもていねい。その奇襲にたどりつくまでも手を抜かず、いかにも時代劇のような腹芸で時間をかせいだり、逆にガバナス側も見くびらずに追撃したり、それなりに知恵比べで戦っていることにも感心した。
他に興味深いのが、宇宙船を自由落下させ、流星に偽装して乗りこむ描写。その伏線となるチキンレース*1の映像ともども、『大長編ドラえもん のび太の宇宙小戦争』にそっくりなのだ*2。
パイロット版的な短編「天井うらの宇宙戦争」がキャラクターデザインまでパロディしていた*3ことに対して、映画化を前提とした大長編には『スターウォーズ』の引用がほとんど見られなかった*4。それが実は便乗作品を元ネタにしていたのだとすれば、その影響関係がおもしろい。