法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『相棒 season20』第16話 ある晴れた日の殺人

ビルの屋上で、ある男の死体が見つかった。死因は刃渡りの長いハサミによる三回の刺し傷。ハサミの柄は指紋がぬぐわれていて、近くにハンカチが落ちていた。一課と特命係が捜査をつづける背後で、ある男が視線を向けていたが……


徳永富彦脚本、橋本一監督。広告代理店の出世競争からこぼれ落ち、追い出し部屋で孤独をかかえていた男のドラマが死後の証言で展開されていく。
いかにも意味ありげな独白をする男と、その口調から冒頭数分で今回のシチュエーショントリックに気づいてしまい、以降は答えあわせを見るような気分で視聴した。他にどれだけ怪しげな関係者が登場しても、今回のシチュエーショントリックと男の独白からすると真相の目くらましにしかならない。
徳永脚本は良くも悪くも刑事ドラマに珍しい人工的なトリッキーな展開が多く、パターンに気づくと全体像まで見えすいてしまう。見ながら『ジャンプ+』の読み切り漫画が同じようなどんでん返しを多用してむしろ意外性を減じがちな問題を思い出した。
とはいえ、捜査していくなかで集められた関係者の言動が事件の動機をささえてドラマをほりさげていく良さはあったし、男のただひとりの部下がつかっていたハサミから指紋がぬぐわれていた動機に意外な面白さはあったが。クライマックスでたっぷり時間をとって、陰影の濃い撮影で独白を重ねるシチュエーションも悪くない。