法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『僕の彼女がマジメ過ぎるしょびっちな件』のツッコミ役としての主人公の立ち位置にモヤモヤする

原作は未読で、とりあえずTVアニメを視聴しつづけている。
TVアニメ「僕の彼女がマジメ過ぎるしょびっちな件」公式サイト
真面目な顔をして何でも性的な発想につなげる恋人や、友愛と性愛の区別がつかない転入生の女子や、おさななじみで親密すぎて下ネタに遠慮のない上級生の女子などに、主人公の少年がふりまわされる。そういうフォーマットの作品。


フォーマットにまつわるもろもろはさておき。下ネタをつるべうちする周囲に対して、常識人の立場でツッコミを入れている主人公に、どこか割り切れない気分をかかえていた。
その言語化できない気分の正体がわかったのが、主人公の恋人がクラス委員会でも性的な発言を披露した第5話。別クラスの真面目な委員長がツッコミ役にまわるが、主人公の恋人は性的なボケをつづける。このクラス委員会でのツッコミは、内容や演出が主人公と大きく違うところはないのだが、ふしぎと引っかかりを感じなかった。


委員会でのボケツッコミは引っかからなかった理由を考えて、これまで主人公と恋人の距離感がおかしいことに気づいた。
恋人関係になって時間がたち、性への距離感が全く違うことを互いに知っているのだから、その価値観をすりあわせる機会もあるはずだ。いやボケ側が周囲にあわせる必要を感じなくても、学校で困らされるようになった主人公は、すりあわせる機会をつくる動機がある。思えば主人公が恋人とたがいの価値観をすりあわせる、恋人らしいプライベートな会話が、これまで放映された範囲では描かれていない。せめて相手と会話を試しつづけて失敗するエピソードくらいはほしい。
その場その場でしかツッコミを入れない描写を、本心ではボケを望んでいると位置づける方法もある。しかしこの作品のボケは激しく、主人公が困らされている描写も本心に見える。
同じボケ役でも、おさななじみの上級生は常に下ネタをいうわけではない。ちょうど第5話で主人公がフライング気味にツッコミを入れ、下ネタなど考えていなかった上級生が困るという展開があった。「姉ちゃん」と呼ばせている年齢差もあって、主人公が相手のボケをやめさせられない背景が理解できる。転入生の女子は、あくまで新しい友人として一方的に親密すぎる行動をとっているので、やはりボケをやめさせる機会や時間が足りないという説明がつけられる。


ここで他の下ネタ乱発の学園アニメを思い返すと、『生徒会役員共』の主人公も生徒会の一員として弱い立場から適宜ツッコミを入れるしかなく、『俺、ツインテールになります』の主人公は一般的な下ネタに対してツッコミを入れるが性嗜好は最も常軌を逸していた。ツッコミとボケの強度が変わらない理由が、設定から深く組みこまれていた。
同じように主人公をツッコミを入れるしかない立場に置くならば、いっそTVアニメでは恋人設定をなくせば良かったのではないか。恋人ではなく、性的な発想ばかりする同級生に恋人面される構図にすれば、自宅にまねかれる描写なども大きな変更なくTVアニメに組みこめる。たがいの価値観をふたりだけで語りあう描写がないことも説明できる。
そしてボケ役の女性にふりまわされていた主人公が、きちんとツッコミできる数少ないひとりとして、恋人になることを選ぶ場面を1クールのクライマックスにもってくればいい。そのまま原作通りの展開に戻れるだろうし、1クールアニメなりのまとまりも生まれるのではないか。