法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『相棒 season16』第5話 手巾(ハンケチ)

警察学校で鬼教官が転落し、意識不明の重体となった。ひさしぶりに米沢に呼ばれ、特命係が首をつっこむ。
被害者を嫌悪している娘や、その娘が刑事として追っている事件から、真実が浮かびあがる……


米沢が再登場したが、あくまで事件に導く立場に終わり、ドラマにはそれほどからまない。カメオ出演くらいの印象。本筋は警察の道を進んだ父娘の葛藤という縦軸と、時間を超えた未解決事件という横軸にある。
過去と現在の事件に隠れた類似と真相を、犠牲者の娘を養子としてむかえた教官の葛藤や、子供の記憶から呼びおこされる展開であばいていく手つきは悪くなく、1時間枠でよく高密度につめこんだものだと感心する。
学生のプライバシーまでふみこんで警官としての資質をさぐっていく鬼教官を肯定し、警察の正しさを裏づけていく物語ではある。しかし鬼教官のかつての捜査の甘さが娘につきつけられる中盤や、警察の能力や立場が両刃の剣と示される真相で、視野を広げているので見やすい。


ただ残念なのはサブタイトルにも使われたハンカチのモチーフが安易すぎたこと。
他人の表情の奥に隠された感情が、見えないところで握りしめたハンカチからわかるというのだが、あまりにも古臭い。劇中でも古典的な小説が引用されるほどだ。むしろ少なくない人が知っている感情表現であり、それゆえ騙しにも使える手法ではなかろうか。真犯人がさりげなくハンカチで偽の感情を装って、それを杉下が看破するような場面もあれば納得できたのだが……