法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『相棒 season16』第14話 いわんや悪人をや(後編)

遺体をほりおこした第一発見者、常盤という青年が、もともと遺体の場所を知っていた疑惑が浮上する。常盤が米国に行った時期も補強材料となる。
一方、事件のまわりで元ロシアスパイのヤロポロクの影が見え隠れ。しかし偽名で隠れていると思われる場所に行くと、そこには似ているだけの別人がいた……


300回記念スペシャルの後篇。終盤の偽ヤロポロクを描写する場面で室内から屋外へ出ていくカメラワークなどは手間がかかっていた。
そして本編では、米国へ亡命したまま退場したかに思えたヤロポロクをめぐる真実と、白骨遺体の謎が解かれる……のだが、ふたつの事件が動機から見ると完全に独立しているのが痛い。社会派ミステリでありがちな、捜査の過程で社会問題が判明しつつ、事件そのものは矮小な個人問題に終始するタイプ。
もし容疑者が殺人犯なら行動が不合理としか思えないところを、異常心理だけで説明したことが特に厳しい。ドラマのレギュラーメンバーを痛めつける犯罪は仕事として無感動に処理して、レギュラーメンバーの利益となる犯罪では罪悪感をおぼえるという、犯人心理の構図は皮肉で良かったが。
米露のかけひきで生まれたヤロポロクの奇妙な顛末だけならば悪くないから、それ単独で人間消失やドッペルゲンガーを思わせるホラーミステリにしたてて、白骨遺体をめぐる事件は違うエピソードで処理すれば良かったのではないか。