法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『キラキラ☆プリキュアアラモード』第30話 狙われた学園祭!ショコラ・イン・ワンダーランド!

剣城と琴爪のかよう高校で文化祭が開かれる。剣城は王子様の仮装で実行委員として走りまわり、琴爪は女王様の仮装で広報担当として練り歩く。
宇佐美たちは文化祭を楽しんでいくが、ともに遊んでいた剣城の妹が体調を崩してしまった。自責の念にかられる剣城に、敵が囁きかける……


映像面では期待しづらいスタッフ構成。小山賢コンテに古家陽子演出、作画監督をふくめて原画はすべてフィリピン外注。
しかし今回はフィリピン側に余裕があったのか、それとも国内でていねいに直したのか、普段よりもキャラクター作画が整っていて、アクション作画もけっこうよく動く。序盤は上野ケン作画監督かとかんちがいしたほどだ。


そうしてプリキュアたちが『不思議の国のアリス』の仮装をする画面の華やかさから*1、そのモチーフを敵が利用して、剣城への裁判がはじまる。実行委員会の仕事より、妹を優先するべきではなかったか、と。
そんな脚本はシリーズ構成の田中仁。あくまで敵幹部による個別の心理攻撃シリーズの一環だが、普段と少し違うイベントをとおして多くの登場人物に見せ場をつくり、本筋にも明確な落としどころを用意できていた。


特に、学園祭の来場者と妹からキラキラルを奪う敵幹部が、どちらを守るか選ばせる「トロッコ問題」への回答がいい。
両方を選ぶなどという答えはないと主張する敵幹部に対して、それでも両方を同時に守ろうと剣城は答えて、キラキラルを使って戦う。ここまでは、「トロッコ問題」を現実に適用する時、出題者の作為も考慮するという定番の展開ではある。
しかし両方を守るためにアイテムを同時使用して疲弊した剣城*2に対して、敵幹部が攻撃しようとした時、来場者と妹から生まれたキラキラルが剣城を守る。
出題者と回答者という関係や、一方を必ず切り捨てる選択肢だけではなく、守り守られる関係も人工的な前提であって絶対的なものではない。そんなメッセージが、意外かつ説得的に示された。

*1:黄色が最もヘンテコな格好をさせられるのは伝統か。

*2:これまでも、男性的なジェンダーの装いをもちながら、優しくて人格は高潔でもスペックは高くないというキャラクターで一貫してきた。『キラキラ☆プリキュアアラモード』第25話 電撃結婚!?プリンセスゆかり! - 法華狼の日記