法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』迷子のパオパオ

のび太が裏山でピンク色の巨大なボールと出会う。それは象の顔に二本足と羽のような耳が生えた不思議な動物だった。
のび太はその動物をパオパオと名づけ、ペットとして飼いはじめることに成功したが、楽しい時間に終わりが近づく……


映画の宣伝をかねたアニメオリジナルの中編SP。脚本は伊藤公志が、コンテ演出は三宅綱太郎が担当。
映画要素は今年のものだけではなく、裏山に畑をつくる描写で昨年に再映画化された『日本誕生』を引いたり、故郷設定で『ドラえもん』におけるパオパオ初出の『宇宙開拓使』を引いたりして、原作へのリスペクトが随所に見られる。のび太の説明を聞いたママがパオパオの全体像をかんちがいする描写も、原作者が愛好した落語のような楽しさ。
ストーリーも悪くない。拾った動物を育てて故郷へ帰してやる藤子F作品らしいプロットを素直になぞるため、きちんと伏線をはって拾っていく。食料問題を解決するための畑が秘密道具による帰還を困難にしたり、掃除を助ける時の小さな失敗が帰還への希望をつないだり、禍福が連結して反転していく構成の妙には感心させられた。
ただ、終盤に今年の映画宣伝映像を入れているので、中編SPにしては少し尺が短く、ところどころ困難の解消があっさりしすぎとも思ったが……故郷へ帰すことを決断した後、残された期間を無言の静止画を重ねた描写は情感があって悪くない。そして全てが終わるかに見せつつ、あえて感動の展開を肩透かしして、いつもの日常に回帰していく結末もいい。


実写の特別映像はPVとして良い出来だが、かなり映画の根幹設定を明かしていて、これを見る前に劇場へ行けた*1のは良かった。
ついでに、びっくりラッキーマンボは今回で終わりだが、映画宣伝のついでに南極から実写で送るスペシャルな映像にしていた。