法華狼の日記

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『エウレカセブン』新劇場版3部作に感じている不安要素

旧劇場版『交響詩篇エウレカセブン : ポケットが虹でいっぱい』や続編『エウレカセブンAO』では、最初のTVアニメ『交響詩篇エウレカセブン』からは監督のみがメインスタッフとして続投していた*1
対する今回発表の新劇場版では、TVアニメ版スタッフのキャラクターデザイナーやシリーズ構成も戻ってくるという。
「エウレカセブン」新劇場版3部作の制作決定、Hardfloorが新曲を提供 - コミックナタリー

制作陣には総監督・京田知己、脚本・佐藤大、キャラクターデザイン・吉田健一というオリジナルスタッフが集結した。

予告映像を見るかぎり、ボンズ本体が制作する*2だけあって映像面での充実は期待できそうだ。


さて、はてなブックマーク等のファンの反応を見ていると、初代の評価ばかり高くて、劇場版や続編については無視したがる意見が多いようだ。
はてなブックマーク - 「エウレカセブン」新劇場版3部作の制作決定、Hardfloorが新曲を提供 - コミックナタリー
しかし私は、初代は機能しないサブカルチャー描写に足を引っぱられた失敗作で、それを削ってジュブナイルとして純度を高めた劇場版こそ素晴らしいと思っている*3。続編もトリックスターを多用しすぎたとは思うものの、すべてをまとめた最終回に満足した*4。そこで思う最大の不安要素は、佐藤大シナリオだと思っている。
初代はサブカルチャー要素を抜きにしても、映像は充実していたのに物語が間延びして感じられた。その時は、放送局の意向で当初の予定より放送期間が2倍に伸びたためだろうかとも思った。しかし同じ佐藤大シリーズ構成のオリジナルストーリーアニメを見ると、『バトルスピリッツ 少年突破バシン』『超速変形ジャイロゼッター』も同じように展開が間延びしていた。
また、SFアニメとしても設定を詰めて見せることなく、かといってキャラクタードラマとして充実させるわけでもない。設定がかたまった作品で単発エピソードに参加してアクセント的に楽しませる時は悪くないのだが、メインライターとして作品の屋台骨を支えられるタイプではないように思っている。
初代でファンから評判の良いエピソードを見ても、少年少女が再会する第26話や、敵の少女が救われる第49話など、おおむね大河内一楼野村祐一が担当している回ばかり。さすがに各話の脚本家がそのままストーリーの全体を決めるわけではないし、両者とも最近の仕事は必ずしも評判が良くないのだが*5、かといって比較的に佐藤大が期待できるようになったわけでもない。


いろいろ考えた結果、とりあえず観客の立場で今からアレコレいってもしかたないし、とりあえず作画だけ楽しみにすることに決めた。素晴らしい映像体験ができれば、映画はそれなりに満足できるものだ。

*1:吉田健一は、一部のデザインや作画でかかわっている。また、続編初期の脚本家は偽名で、いまだ正体は不明。

*2:旧劇場版はマッドハウスボンズから派生したキネマシトラスが制作。しかし会社をたちあげたばかりで手間取ることが多かったらしく、元請けのボンズがリソースを投入して結果的に作画の見どころが多い作品になったという。

*3:『交響詩篇エウレカセブン : ポケットが虹でいっぱい』 - 法華狼の日記

*4:『エウレカセブンAO』第二十三話 ザ・ファイナル・フロンティア(episode:23 Renton Thurston)/第二十四話 夏への扉 - 法華狼の日記

*5:野村祐一は、初代で評判が良かったエピソードを担当したスタッフが作ったオリジナル作品『忘念のザムド』でメインライターをつとめた。ぐっと世界観の統一感を高め、物語も映像も悪い作品ではなかったが、やはり迂遠な回り道は多かったのが不思議。