法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』ターザンパンツ/追跡!トレーサーバッジ

ドラえもんのび太の南極探検クイズは、ペンギンの移動というよくある映像を2択クイズにしているだけで、着ぐるみを実際に南極へもっていったことは企画以上の意味がまだないかな。
本編は前後とも原作あり。動画工房回なので、作画もよく動いている。


「ターザンパンツ」は、のび太に対して近所の犬が吠えてくる問題を解決するため、動物となれあえる秘密道具を出す。ターザンのように活躍しようとするのび太だが、思った動物を集められず……
また藤子F世界でライオンが脱走してる、という感じの原作短編を映像化。そういえば最近に『ターザン』が新作映画化されると聞いていたが、調べてみると2016年夏に公開済みだった*1
多数の動物を手描き作画でちゃんと動かして、なかなかに手間がかかっている。原作通りのオチも、葉っぱなどを使って見事に隠すべきものを視聴者から隠しつつギャグとして昇華していた。
ただ、犬にツリーハウスを作らせるアニメオリジナル描写は虐待のように感じられたし、ここでジャイアンスネ夫がターザンパンツの機能を目撃しているためライオン保護に活躍したことを知らせたがる結末と微妙な齟齬がある。


「追跡!トレーサーバッジ」は、のび太がマネージャーとして連絡をとるための人探しで苦労したため、現在位置を表示するための秘密道具を出す。追跡するためのバッジを友人たちに渡して、さっそく活用するが……
町内いっぱいを使った追跡劇が展開される原作初期の佳作を、ていねいに映像化*2。地図上をバッジのアイコンが動いていくという描写で節約した映像リソースを、実際の追いかけっこ描写にそそぎこみ、アクション回として充実していた。
ほとんど物語は原作を逸脱せず、オリジナル描写といえばジャイアンがバッジの能力に気づく描写を足していることと、スネ夫ジャイアンの母が罠にかかる場面くらい。地図上を移動するバッジの様子から誰が何をしているのか推理する遊戯性と、位置関係をしっかり把握できる追跡劇の迫真性が、映像作品としての楽しさを生む。現地で起きていることが地図にオーバーラップする演出は不要かとも思ったが、のび太が推測した情景のビジュアル化ということから終盤の騙しあいの驚きを増していた。

*1:映画『ターザン REBORN』公式サイト

*2:『パニック・ルーム』 - 法華狼の日記たまたま最近に見た映画が追跡劇にしては位置関係の描写がうまくなく、今回の良さが際立って印象に残った。ちなみに原作後期にも、のび太ひとりが周囲から追われる「町内突破大作戦」というエピソードもあり、それを中編にふくらませた近年のアニメ化も良かった。『ドラえもん』町内突破大作戦/映画ドラえもん 新・のび太の宇宙開拓史/ゆめの町ノビタランド - 法華狼の日記