法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『日本誕生』

イザナギイザナミが日本をつくって、その子である荒ぶる神スサノオヤマタノオロチを倒した神話。各地を征服するよう命じられ、平定していくヤマトタケルの冒険。ふたつの日本を代表する伝説的な物語がかさなりあう……


1959年に公開された、東宝映画が1000本目を記念して公開した東宝スコープ大作。時代劇を多く残した稲垣浩が監督をつとめ、東宝特撮を象徴する円谷英二特技監督をつとめた。

DVDでひさしぶりに視聴したが、3時間もある長さなので、さすがに休憩が入る。たしか以前に視聴した時はLDだったので、ディスク入れかえ作業があるため休憩を意識しなかった。


オールスター超大作で原作に外道なキャラも多いため、名優がいつもと違う役柄をやってる楽しさはすごい。好色な志村喬に女装の三船敏郎アマノウズメ乙羽信子
しかしスサノオを演じる三船敏郎は解釈一致だが*1、二役でヤマトタケルまで演じるのはやはり違和感がある。原作のヤマトタケルといえば騙しうちばかりで、その根幹は映画でも変わらない。映画における描写も、当初は好戦的で敵との対話から平和に目ざめる幼い人格は、当時の三船敏郎らしいとはいいがたい。目元しか見せない服装に設定しているとはいえ、敵の王に美しいと評される女装をするのも、やはり線が細い俳優がやるべきだったとは思ってしまった。
また、スタジオ内に作られた屋外セットは日本映画としては大規模だが、カメラワークをつけてホリゾントがバレているシーンの多さが残念。残っているフィルムの問題かもしれないが、屋外ロケとの照明や色調もそろっていない。室内の撮影もカメラ位置が凡庸で、巨匠と呼ばれたベテランの稲垣浩だが、黒澤明はもちろん本多猪四郎にも劣っていると感じられた。
円谷特撮は休憩をはさんだ第二部からは多いが、あまり建物のミニチュアをつかえる状況がないので、スケールを感じにくい荒野や合成ばかり。そのなかでは、人工物が多少ある八岐大蛇と三船敏郎の剣技は良かった。また、終盤の湖から水があふれるシーンは過去に見た印象より津波のような恐ろしさがあった。

*1:いつものオオアリクイのように手足をのばすポーズを多用する。