法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『相棒season15』第1話 守護神

人を殺したという女性が自首してきたが、呪い殺したという告白に、伊丹と芹沢はとりあわない。
しかし、その女性を傷つけた3人が溺死しているという連続性に、杉下は興味をいだく……


初回2時間SPとして、2時間超の放送。CM中には、旧相棒が登場するらしい映画『相棒-劇場版IV-』の宣伝も。
相棒-劇場版IV-
前seasonで印象的だった第15話の、捜査に極端に非協力的だった青年が、冠城と同期で警察学校を卒業し、早くも杉下に接近しているという幕開けは意外。
『相棒season14』第15話 警察嫌い - 法華狼の日記

目撃者が真相を語らない理由は個人的に警察が嫌いなだけで、事件とかかわりがあるわけではない。

とはいえ、どうやら相棒交代とまではいかず*1、今のところは前seasonから持ちこした課題のひとつといったところ。結末では、断定的ではないが、遺体を隠蔽する場面も暗示されていた。
今回はまず広報課に配属された冠城が、社美彌子の隠していた因縁をつきとめ、とりひきすることで相棒に復帰した。


そしてそうした特命係まわりの人間ドラマと、本筋のサスペンスはそれほど密接な関係ではない。祖母から呪力を継承する女性のそばに、幼馴染の男性が「守護神」として存在している関係性を「相棒」のようだと考えることもできるが、これは深読みだろう。
つまり抱き合わせで2時間SPになったようなものだが、本筋は本筋でサイコサスペンス的な物語として悪くない。青森まで捜査の手をのばすことで、SP回らしく情景が豊かだった。さらに、直近の呪殺で部屋から人間の痕跡がすべて消されていたという手がかりから、ただ人間の実行犯がいるという推理を超えて、誰がどのように状況にかかわっていたかまで論理的にみちびく手際はするどい。輿水泰弘脚本は、時々エラリー・クイーンばりの本格性をねらった推理が飛び出すことがある。
そして全ての真相は一周まわって平凡なものに落ちついたが、しかし全てが溺死という偽装にしても不自然な連続性に説明をつけるという意味では悪くない。“呪殺”の場面で、犯人像を映像として隠すか、いっそ女性の主観として“守護神”を見せれば、ホラーとしてさらに盛り上がったかも。事件にかかわった人々の顛末も、まさに「人を呪わば穴二つ」で、それをドラマとしては驚くほど踏みこんだ凄惨な絵として見せてくれた。

*1:極端に警察が嫌いで、しかし調査は優秀という性格は、けっこう新相棒になっても面白くなりそうではある。