法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ボトムズファインダー』

とある貧しい惑星で、アキ・テスノというひとりの少年が谷底の社会「ボトムズ」で暮らしていた。
人型機械「At(アルトロ)」を操る生活をしながら、アキは崖上の世界へ出ることを目指している。
そんなアキのもとに、誘拐された少女を救出してほしいとの依頼が舞いこんだ……


ボトムズフェスティバルで『装甲騎兵ボトムズ Case;IRVINE*1につづく第2弾として2010年に上映された中編OVA
ボトムズWeb | ボトムズファインダー
原典のTVアニメ『装甲騎兵ボトムズ』を配信中*2GYAO!で、10月30日から無料配信予定。
http://gyao.yahoo.co.jp/p/00066/v13085/
これが初監督となる重田敦司は、メカ作画をメインに手がけてきたアニメーター。以前には富野由悠季作品でアニメデザインを担当し、高橋良輔作品において演出をはじめた。
わかりやすい語り口と自由なアニメーションは高橋作品らしいし、細部まで詰めた設定や描線の均一なデザインワークは富野作品*3のよう。導入は手塚治虫の漫画『火の鳥 黎明編』にも似ている。


作品そのものはシリーズ企画のひとつだが、原典となる『装甲騎兵ボトムズ』の固有名詞を引用しつつも、異なる語義や語源を設定。おなじ企画の2作品が素直な続編や外伝だったのに、これはリメイクあるいはインスパイアのようだ。
しかし設定を一新したおかげだろうか、オーソドックスな物語を約40分で無理なくまとめている。深刻ぶることもなければ能天気すぎることもない。あえて主人公の成長を描かず、異なる階層の人々の出会いと別れを描ききって後味がいい。
そのような無駄なく主張しない物語のおかげで、映像の凄さを素直に受けとることができる。3DCGで描画されたロボットは質感や動作が軽いが、それは重量感に欠けるというよりは動きの軽やかさとして効果的な表現。ワイヤーをもちいたアクションなど、手描き作画の見どころも多い。
特に斬新だったり独自性があるわけではないが、娯楽活劇ロボットアニメとしては完璧といっていい完成度だった。