法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『戦後70年 千の証言スペシャル 私の街も戦場だったII 今伝えたい家族の物語』

終戦記念日にあわせて、TBS系列で放映された2時間番組。著名人の証言を中心に、戦争末期の日本の姿を映しだしていく。
戦後70年 千の証言スペシャル「私の街も戦場だったII 今伝えたい家族の物語」|TBSテレビ
3月の第1弾は素晴らしかったのだが*1、それより散漫なつくりで新情報も少なかった。スタジオのトークも長すぎる。
まず番組は、目玉にしている瀬戸内寂聴氏や森英恵氏や高見盛氏といった著名人が証言したり調査する。その流れから湯川れい子氏の親戚が特攻機に搭乗していた話が始まったかと思いきや、その桜花をめぐる証言や資料だけで後半を終わらせてしまった。番組サイトを見ても、桜花は第1弾でつたえきれなかったという位置づけ。
そもそも著名人は証言を公表する機会が多いだろうし、この番組でなくても可能だろう。実際に瀬戸内氏の家族にまつわる証言は、以前から著作で発表されているという。第1弾の視聴率が良くなかったことへの対策なのかもしれないが、それで番組の独自性まで欠けてしまった。


ただ、第1弾の延長としては良いところもあった。
たとえばガンカメラ映像を現在の風景にあてはめる演出を発展させ、街角にいる著名人へ戦時下の風景を合成する演出は印象的だった。
青函連絡船らしきガンカメラ映像を、鳥取沖に沈んだ艦船と特定していったのも良かった。資料を発掘して検証する作業をきちんと映しているから、あらためて歴史を知る大切さを主張しても説得力がある。
桜花で自爆攻撃された米軍から、特攻作戦を否定しつつ特攻隊員を否定しない証言を引きだしたり、海にいる日本兵を米兵が助ける映像を映したり、きちんと国外の視点も描いている。


路線変更するのもいいが、それならば第2弾ならではの主軸がほしかった。
たとえば著名人の証言を核にしつつ、齟齬の訂正や補足となる一般人の証言をあわせて歴史を立体的に浮かびあがらせることもできたろう。そうすれば証言で歴史を知る困難と、それでも収拾すべき貴重さがわかるはずだ。
番組でも、瀬戸内氏の母が戦死した動機については、番組が提示したものと瀬戸内氏との解釈では違いがあった*2

*1:感想はこちら。『戦後70年 千の証言スペシャル 私の街も戦場だった』 - 法華狼の日記

*2:どちらにしても死者の内面を推測したものであるし、動機が矛盾しているわけでもなく、一方が誤っているとはいえない。