法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『Classroom☆Crisis』第1話 遅れてきた転校生

近未来、大企業の一角にある「霧科科学技術学園」に、ロケット開発と学業を同時進行する小さな教室があった。
その教室にやってくる予定の転校生が、なぜか現れない。どうやら誘拐され、宇宙の採掘場に監禁されているらしいのだが……


長崎健司監督、丸戸史明シリーズ構成のオリジナルSFアニメ。
アニメ「Classroom☆Crisis」オフィシャルサイト
よくあるSFアニメ要素をよせあつめ、オリジナリティを少し足し、展開の意外性とメカ作画を売りに、シャープなデザインで映像化。
どことなく『セイクリッドセブン』『宇宙をかける少女』『革命機ヴァルヴレイヴ』『バディ・コンプレックス』あたりのサンライズ作品群を思い出す。制作会社のLay-duceボンズから独立したスタジオで、そのボンズサンライズから独立した会社だから、どことなく似かよっているのも自然か。
宇宙描写のリアリティは低めだが、最後に技術レベルの非現実性をビジュアルで見せているので、そこはフィクションとして納得できた。


アニメ近接の、しかしアニメ関係者ではないスタッフを中核にむかえて変化をつけようとするパターンも共通。とはいえ、丸戸史明シリーズ構成のTVアニメは3作目なので、すでにベテランといっていい仕事量か。
あまり独自性は感じないが、誘拐された転校生を教室全体で救うことになり、サスペンス終了後の結末で驚かすという展開は悪くない。WEB最速配信のGYAO!*1で視聴し、ネタバレを回避できていたので、素直に楽しむことができた。
ただ結末の衝撃を高めるためには、救出は計画通りという展開にすべきだと思ったし、わざわざ少女を活躍させるようなサービスは不要だとも感じた。おそらく大人の教師がドラマに深くかかわるならば子供が勝手に計画を進めたことにしないとリアリティが欠けるという判断なのだろうが。


あと、誘拐が第1話で終わったらしいのは少しもったいない気がした。誘拐犯が途中から舞台から降りて、完全に結末の踏み台にされてしまった。
企業側の約束不履行に怒った労働者が企業人を誘拐するという動機は、かつての南米の誘拐事件を思い出させるし、現在の日本では誘拐犯に共感すらさせられそうな気がする。口座すらもたない日雇い労働者という設定は、未払い賃金を現地まで運ばなければならない展開とも密接につながっている。
この第1話をふくらませるなら、たとえば舞台を現代日本の過疎地にして、外国人実習生が工場責任者を監禁、発端は過酷な作業環境による仲間の死亡事故、要求した身代金はしはらわれる約束の残業代……といった物語はどうだろう。そのような境遇の誘拐犯に、被害者も協力をはじめたりして二転三転……と考えていくと、大規模化した『大誘拐』といったところになるかな。