法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

「あなたのSFコンテスト」のプロット『熱核のアドモスフェア』

このようなインターネット有志の企画があった。投稿サイト「小説家になろう」をメインの舞台として、SF作品を書きあうらしい。
あなたのSFコンテスト

 機械あるいは岩塊のごとき巨大な怪物クローサーが、最初に地球へ落ちてきてから一年たつ。それ以来、星が降るようにクローサーが大地に落ちては、街を人を焼きつくそうとする。
 通常兵器はもちろん、化学兵器核兵器クローサーには通用しない。人類はクローサーが何かを探すように移動する進路から逃れ、動きを止めるまで待つしかなかった。


 ある夜、三人の少年が森の奥に集まった。ある者は選ばれて、ある者は選んで、ある者は望まずに。
 声に導かれながらたどりついたそこに、鈍く光る巨大な物体があった。クローサーにそっくりな、地面に膝をつく金属の巨人。
 その巨人アドモスフェアの体内には、青白く輝く少女がいた。少年たちは少女エアから語りかけられ、クローサーを地球から排外するためのパートナーに選ばれる。そこに落着するクローサー
 エアは少年たちに求める。死を覚悟して戦うか、と。


 一人が導かれるままにアドモスフェアに入ると、内部の空間が蒸気で満たされた。エアから放射状に無数の線が空中に流れ、巨人と少年の精神が一体化する。
 力は巨獣よりも巨人がまさっていた。しかし慣れないため戦いが長引き、少年は消耗していく。心身の酷使を超えた疲労感と、エアにふれた肌の変色。
 かろうじて勝利し、アドモスフェアから降りた少年は、二人の仲間が見守る中で、血の涙を流して倒れふす。粘膜という粘膜から血を噴きだし、少年は息をひきとった。
 残された仲間にエアが告げる。
 いったはずだ、死を覚悟して戦うか、と。


 アドモスフェアから降りたエアは、地面を踏みしめるごとに足首まで沈み、周囲の大気を熱くする。
 エアは霊長類ではない。地球へ最初に落ちた怪物の内部にいた、アクチノイド生命体だ。
 アクチノイド生命体は中性子による核変換の連鎖で思考し、常温では固体の関節部を原子崩壊熱で溶かして動く。体内の核反応だけで活動でき、化学反応を必要とせず、恒星間の旅を生身でつづけられる。
 さまざまな星系に降りては情報とアクチノイドを蓄えることがエアたちの目的だ。充分に情報を集めた後、アクチノイド生命体同士がふれあうことで臨界量に達して核爆発を起こし、星系の重力圏を脱して再び恒星間の旅へと戻っていく。
 しかし、この惑星の霊長類に知的生命体としての価値を認め、核爆発で絶滅させることを惜しんだとエアは語る。そして人類が自ら絶滅するまで、仲間のアクチノイドを排外する作業を手助けするよう少年たちへ求める。
 本能的に同種と戦えないエアのかわりに戦う意思を持ち、外殻を動かすためにエアと似た体格と精神を持つ者として、三人の少年が選ばれたのだ。
 放射線による遺伝子の変容と細胞の壊死が対価と知らされながら、少年たちはクローサーとの戦いをはじめる。
 エアの言葉がどこまで真実かと疑いながら。


 できるだけ時間をかけず、エアとの距離をとりながら、二人の少年は交代でアドモスフェアを動かしてクローサーを破壊する。
 一方、大人たちはエアを追っていた。その目的は、人類のとどかない時間と空間を旅して集積された情報と、エアの生命の秘密そのもの。アクチノイド生命体とは、すなわち思考する核燃料。捕獲すれば、安定して制御できるエネルギーと、核廃棄物を管理する手段が同時に入手できる。


 しばらくして、一年前のクローサー災害の再調査で、エアそっくりの少女の記録が見つかった。
 かぎりなく正確に記録されシミュレートされた人格は死者の再生にひとしい。アクチノイド生命体がコピーしてエアとして復活した少女は、自らの人格が消えることを恐れ、少年を利用しているのかもしれない。もしもエアがクローサーから逃げたり戦ったりしなければ、ずっと犠牲が少なくてすんだのではないか……そのような仮説が立てられた。
 そして最初に死したはずの少年がアクチノイド生命体として復活する……

……えっと、『ぼくらのキャプテン・アース』?
オチは『デッドガールズ』みたいに長命の生命体になった子供たちが彼岸で生きつづけるとか?
なんだか思いつき感にあふれすぎていて、きちんとした形にする気もないのに、公表するのは良くない。