法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

検察庁法改正案問題というより黒川弘務定年延長問題として、大阪地裁が国に経緯の文書開示をもとめる判決を出したとのこと

 裏金問題の追及で知られる上脇氏による訴訟で、かなりふみこんだ見解の判決を出したらしい。
検事長定年延長巡る文書、国に開示命じる判決 「黒川氏のため」言及 [大阪府]:朝日新聞デジタル

神戸学院大の上脇博之(ひろし)教授が関連文書を不開示とした国の決定を取り消すよう求めた訴訟の判決で、大阪地裁は27日、不開示決定の一部を取り消した。徳地淳裁判長は判決理由で、「定年延長に関する法解釈の変更は黒川氏のためと考えざるを得ない」と指摘した。

 記事を読むと、検察庁法改正案がどのように進められたかではなく、それ以前の安倍政権による閣議決定の経緯が焦点になっているらしい。


 2020年当時、Twitter*1で「#検察庁法改正案に抗議します」というハッシュタグ運動がもりあがるなか、安倍政権は強行しようとしたところ、黒川氏の賭け麻雀問題が発覚したとたん検察庁法改正は中止された。
 あくまでその前後の政府答弁の矛盾や拒否、口頭決済のような手続きなどが問題視されたのであって、ハッシュタグの対象となった検察庁法改正は問題を象徴するひとつとして選ばれたのだと認識すべきだろう。


 ちなみに「#検察庁法改正案に抗議します」がもりあがった時点でnoteに「検察庁法改正案」がおよぼす範囲の解説*2を書いて注目された弁護士の結城東輝氏は、後日に「法務・検察行政刷新会議」のオブザーバーとして呼ばれたという。
検察庁法改正案/黒川氏/ゴーン氏に関する政府の会議の最終報告書について|結城東輝(とんふぃ)

法務・検察行政刷新会議とは、ある2つの事件によって法務省検察庁が国民の信頼を失ったため、そのあり方を見直すべく、森まさこ前法務大臣が設置した会議体です。

 しかし国民の信頼をうしなったことへの対処のはずが、その原因の究明などは議論されないことが最終的に決められたという。

①なぜこの法案をめぐる法解釈変更の経緯や決裁文書が作成・保管されていないのか(口頭決裁の問題)②検察の独立を保つことができるような人事制度になっているのか(人事の問題)③あの勤務延長・検察庁法改正案は黒川氏をターゲットとしたものだったのか(問題の経緯)

まず、③は議論の的にできないということが会議体で共有されました。もちろん委員の中には異議を唱える方も少なくありませんでしたが、最近良く耳にする「個別の人事に関する回答は差し控える」という当局の説明もあり、また「未来志向」という会議体そのもののスタンスもあって、過去の事件をあれこれ述べるのではなく、今後どうしていくべきかの議論に集中していただきたいという趣旨でした。

 たしかに会議を設置した森氏からして、会議の半年ほど前に、同じ趣旨で説明責任から逃げる答弁を36回もくりかえしていた*3。疑惑の当事者が主導する検証の限界だろう。
 結城氏は結論のひとつとして、会議の存在そのものがハッシュタグ運動の参加者にとどいていないことや、それゆえふみこんだ議論ができなかったかもしれないことをなげいていた。

民意の儚さも感じました。「#検察庁法改正案に抗議します」が盛り上がった後、この問題に誠実に向き合わないといけないと考えた法務省が設置した本会議については、国民の関心は最後まで高まることはありませんでした(少なくとも私はそう感じました)。取材もほとんどありませんでしたし、Twitter等で発信しても特に拡散もされませんでした。国民の関心が高ければ、より踏み込んだ議論をせよという民意の後押しも反映できたかもしれません。本会議の議論の内容は、国民にけじめをつけようとする大臣や法務省検察庁の方々の努力の結晶でもあります。どうか当時抗議された方々に届くことを願ってやみません。

 たしかに「#検察庁法改正案に抗議します」のもりあがりは特異的で、残念ながら継続性は弱いとは思う。しかし当時に問題視された中心にあるのが検察庁法改正案問題ではなく黒川弘務定年延長問題であれば、その中心を除外した会議が注目や期待をあつめないことも当然ではないだろうか。
 事実として、今回の上脇氏が勝ちとった開示判決は検察庁法改正案ではない部分が対象らしいのに、東京都知事選や沖縄米軍問題伝達遅延など重要な報道が集中している現在でも高い注目をあつめているように見える。