遠未来の火星では、貧しく過酷な環境のなかで複数のドームに人々が居住し、出産がおこなわれないなかで子供の姿をした「ドール」と呼ばれる人造人間を愛玩し、各ドームを代表する闘士の決闘で資源が分配されていた。ドームをわたりあるきながら闘士として活躍する女性レイラは、ドールという少女ネイに出会い、ともに旅をすることになるが……
2003年に1クールで放映されたオリジナルSFアニメ。真下耕一オリジナルアクションの一環のように制作された。
もともと美麗なアニメーションを活用したスタイリッシュな演出を得意とした真下監督だが、制作会社ビィートレインをたちあげてからは枚数制限のなかで音響を重視して制作するようになっていた。しかし今作は闘士戦という設定のおかげで体を動かすアクションが時々ある。特にOPのサビは魅力的。
ただし、序盤こそ主人公が街をわたりながら闘士戦をおこなうようなフォーマットの物語と期待させるが、1クールアニメなのですぐに主人公の来歴の謎解きに物語の重心がうつって、全体としては平凡でまのびした深夜SFアニメといった印象で終わった。DVD各巻のブックレットを読むとそれなりにしっかりしたSF設定があるのに、視聴者へ開示していないため、終盤の展開に意外性を感じづらいしドラマにも乗りにくい。
ただ、DVD最終巻に付属する吉富昭仁の漫画は後味の悪いSF短編として完成度が高い。当時の真下作品でにおわせながら本編では意外と味わいづらい女性同性愛描写もひねったかたちで描写されている。