法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『リーガル・ハイ』第7話 天才か暴君か!? 世界的アニメ監督パワハラ裁判!!

「これはジャガイモですか? サツマイモですか?」
「犬塚信乃です」
「才能ねーなら、やめちまえー!」


アニメスタジオの労働問題を描くと知り、はじめて視聴した法廷ドラマ。
スタジオ小春日和とか、興行収入新記録だとか、やめた若手の名前が細川だの梅田だのとか、後継者問題でゆらいでいるとか、アニメ会社には珍しくスタッフが全員社員だとか、どう考えてもスタジオジブリをモデルにしたとしか思えない物語が展開される。
しかし今回だけ視聴した印象として、本編はイマイチ。劇中アニメのクオリティが高くないことは我慢するとして、後述するように人間観が深いようで浅い。


法廷ドラマとして、あまりにも狂騒的な演技が法廷で披露されるのに、いっさい裁判長が止めないところで引っかかる。
それどころか、やりたいほうだいできることが有能な代理人の証明であるかのように描かれる。なぜ一方が勝てたのか見ていて納得できない。
それなりに良かったのは裸体露出をめぐる謎解きくらいか。しかし三つの事件を一回で描くためか伏線は不充分。決まった時間に裸体をさらすという行動から真意はピンときたが。
むろん、過去からドラマを視聴しつづけていれば、そういう世界観の作品だと納得できたかもしれない。リアリティを求めるドラマでないことは今回に見ただけでも理解はできた。


しかし何より、物語の構図そのものがきつい。幼稚で空想的な理想主義に対するものとして、ただ家父長制度的な観念を工夫せず持ってくるばかりで、それがなぜか法廷で勝利して終わる。これは正義の相対化でもなんでもない、ただの保守反動だ。
いや、芸術家の非人道性を最終的に肯定するなとはいわない。しかし巨匠の人間像が、最初に予想された範囲から一歩も出ていないのでは、驚きも納得もない。
主人公ふたりの関係をアニメ監督と弟子の関係になぞらえた物語のようだが、せめてその関係性にしぼって描いて、もっと紆余曲折を描いてほしかったところ。