法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『バトルスピリッツ ソードアイズ』雑多な感想

神によって作られた世界。そこにはソードアイズと呼ばれる瞳を持つ、光の戦士と闇の戦士たちがいるという。かつての政争をへて、一般人として育てられた弟と、覇王としてふるまおうとする兄の衝突が、やがて世界をゆるがす戦いへ移行していく。
TCGバトルスピリッツ」のカード内で展開されているファンタジー戦記をモチーフとしたTVアニメ。タイトルには中盤から「激闘編」とつく。今作から女性的なデザインも完全に3DCGで映像化するようになった。


序盤は残念ながら、ベタベタな王道ファンタジーへ中途半端にカードバトルを入れているだけで、まったく感心できなかった。ファンタジー展開を優先するため、主人公側が敗北しても横紙破りで逃げ出したりしたこともあって、カードバトルと物語の乖離も大きかった。OP映像が本編の使いまわしだったことも印象が悪かった。
しかし1クール終盤に主人公が母と再会した時から、物語の雰囲気が変わる。兄王と戦わせるために王家から主人公を脱出させたはずの母が、主人公に対して兄王の味方になるよう指示。それまで順調に仲間を集めていた主人公の梯子が盛大に外される。
『バトルスピリッツ ソードアイズ』13話 宿命の対決 黒天狐ネガ・ナインテイル! - 法華狼の日記
やがて敵側にいる闇のソードアイズ個々の背景や心情が描かれて、徐々にシリアスなファンタジーへ移行。主人公も兄王と同じ陣営に属することになり、共闘を始める。そこから終盤まで、何度かバトルや論争をするものの、決定的な対立にいたることはなくなる。
そして君側の奸との予想された対決などがありつつも、主人公たちは世界を人間がになう社会へ作り変えようと戦うこととなる。


サンライズアニメでいうと『機甲界ガリアン』や『ガサラキ』が最も近いだろうか。狭い視野の主人公に対して、ラスボスが世界全体の救済を考えているという構図は、アニメにおいて古典的な設定ではある。しかし、中盤時点から主人公が納得してラスボスに協力し、尖兵として働くようになるのは、さすがに先例がほとんど思いつかない。
そしてその主人公がラスボスのカリスマに飲み込まれているように見えず、ちゃんと考えて必要ならば対立もして行動しているというのが、また素晴らしい。地に足をつけたまま高みを見ようとしている。
とある設定を隠蔽しつづけた映像のしかけも印象的だった。一種の叙述トリックに近いが、子供向けTVアニメで半年近くも隠しとおしたスタッフの頑張りには頭がさがる。その映像のしかけがあったからこそ、最終回で主人公の見あげる空も感慨深い。