法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

国会中継映像がYOUTUBEから削除された中山成彬議員の、インターネットの使いかた使われかた

従軍慰安婦問題で朝日新聞が資料を歪曲したという中山成彬議員の、根本的な誤り - 法華狼の日記
上記エントリでとりあげた中山議員質疑の、NHK国会中継映像がYOUTUBEから削除された。権利者つまりNHKではないものがアップロードしていたためらしい。その削除が「史上初」だとして一部で話題になっている。
http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1754076.html
むろん、はてなブックマークで複数の指摘がされているように、削除された前例はあり、史上初ではない。
NHKの国会中継の動画削除について : テツの日記

最近、NHKの国会中継を録画してYouTubeにアップしてある動画が

NHKの申し立てで削除されているようですね。

11/15の参議院予算委員会西田昌司議員の質疑が

NHKからの著作権侵害の申し立てにより削除されています。

個人的には、国会質疑のような映像は、権利者でなくてもアップロードするだけの公共性を感じなくもない。
しかし、そもそも衆議院サイトで映像が広く一般公開されている。今回の中山議員質疑も視聴可能だ。
衆議院インターネット審議中継
NHK独自の要素に注目したアップロードならばともかく、わざわざ著作権者と衝突する必要がある事例とは思えない。


しばらく待てば議事録もサイトで一般公開され、たやすく検索して引用することができるだろう。
国会会議録検索システム
今回のことに限らず、議事録を調べていくと、日本政府の社会問題に対する認識が変化していくさまが確認できる。以前にエントリで紹介したが、従軍慰安婦問題もそうだ。
従軍慰安婦の強制連行を狭義にとどめない問題意識は、1990年以前から確実に存在していた - 法華狼の日記

当時の日本政府が民間業者へ全ての責任を押しつけつつ、政府による調査を拒否していたことがわかる。未調査であるのに民間業者が行っていたと主張していること自体、責任回避を優先した態度ということが明らかだろう。
また、日本政府が狭義の強制連行のみを否定していたのではないことも明らかだ。かつて軍関与全体を否定するような主張を政府が行っていたからこそ、1992年の吉見教授による史料発見報道が重大事として受け止められた。

そして議事録の流れを見てのとおり、この段階で主に求められていたのは日本政府による調査だ。狭義の強制連行が存在しないと判明した後に、後付けで広義の強制連行が持ち出されたわけではない。


ついでに、個人的な趣味の分野で検索すると、意外と楽しい質疑がひっかかったりする。ひまつぶしとして、おすすめしたい。
一例として、「ドラえもん」で検索してみた。まず2005年。
国会会議録検索システム - メッセージ

国務大臣麻生太郎君)

 最後に、ドラえもん、じゃなかったホリエモン、済みません、ホリエモンに、あっ、ホリエモンじゃない、堀江社長にアドバイスを求めた事実の有無についてのお尋ねがありましたが、そのような事実はございません。(拍手)

こういう明らかな間違いも議事録に残るので、もちろん中山議員の質疑も議事録に残るだろう。次は1996年。
国会会議録検索システム - メッセージ

○菅国務大臣

私自身、リサイクルについて何かやっているかということなんですが、私は実はこの問題はかなり古くからいろいろなことをやっておりまして、ある時期までは、私の事務所ではリサイクルカンパというのをずっとやっておりました。これは古新聞をもらってきてカンパにしていたのですが、今、私の仲間の地方議員が続けていたりします。また、選挙のときには大きなかご、そこにドラえもんの口をあけておきまして、そばに、カンを入れてください、こう書いておきますと一石二鳥になる、そんなこともやっておりまして、ちょっと古い自分の質問を見ておりましたら、そういう質問なども何度かさせていただいております。

何やってたんだ菅直人。最後は1986年。
国会会議録検索システム - メッセージ

参考人(天谷直弘君)

 テレビを見ていましても、例えばアメリカ製のテレビソフトが日本には相当たくさん来ております。それから日本のソフトで言いますと、「ドラえもん」であるとかなんとかいうものはかなりフィリピンとかあの辺に行っているそうでございますけれども、この辺がやっぱり公平に見てまだ日本のテレビソフトとか漫画とかいうものの輸出はされているものの、余り文化の薫り高いものが出ているのかどうか私はやや疑義を抱いております。どういうものが文化性が高くてどういうものが低いかと定義はできませんけれども、おおむね常識か勘で申し上げているわけであります。

連載開始から15年以上もたち、映画シリーズも複数制作されていたころの認識である。常識や勘で文化性の高さを判断されるのも、何というか嫌なものだ。


ともあれ、政府関係サイトの便利な機能を一般人が知らないことは、広報側の問題ともいえるだろう。
しかし、そうした一般人と同じような認識で政治家をやられても困る。実は、当の中山議員がそうだった。

なぜそこで衆議院サイトを紹介しない。しかも、「初めてだとか」などとインターネット上の流言を信用し、「どっかから圧力が掛けられたのでしよう」と陰謀論を展開しているところを見ると、情報を判断する能力だけでなく、情報源にもいささかの問題があると思わざるをえない。
なお、「使った資料」には少しばかり興味もあったが、ブログエントリで映像とともにアップロードされたPDF資料を見たところ、ただ質疑で用いたフリップを拡大しただけだった。解像度が高くなったので文字を読みとりやすくなったが、新たな資料を出せたわけではなく、もちろん中山議員の主張を裏づける資料とはなりえない。
http://nakayamanariaki.cocolog-nifty.com/blog/2013/03/201338-a9de.html
むしろ下記PDF資料を見てのとおり、朝日新聞記事のどこにも強制連行した証拠といった解釈が書かれていないこと、あくまで軍関与の証拠として報じられていたこと、等々の不都合な真実が明らかになっただけだろう。
http://nakayamanariaki.com/pdf/03a_panel.pdf