2008年の川尻善昭監督作品。もとは不死者の闘争を描いた『ハイランダー』シリーズを2007年に海外向けにアニメ映画化した作品だが、日本国内向けに合わせて16分にわたるパートを足し、96分のディレクターズカット版とした。
キャラクターデザインは、これまで川尻監督がよく組んでいた箕輪豊ではなく、阿部恒が担当。そのため繊細で耽美な絵柄というより、硬質で力強いという印象があった。メカなどで3DCGを多用したことで、映像全体に無機質な印象がある。
内容としては、短い尺でよくまとまっているが、映像も物語も新味が少ない。
復讐以外に興味をなくした主人公は、作中で批判されるくらい性格に奥行きがない。信念をつらぬく強靭さでも、復讐心にこりかたまった狂気でもなく、ただ視野が狭いだけという印象だ。
近未来の荒廃したニューヨークで圧制をしいている復讐対象と戦いながら、さまざまな時代と地域で敵を追い続けていく回想がはさまれるが、これも作中で批判されるくらい成長がない。
回想されるアクション自体も、日本の戦国で戦ったり、ドイツ軍と戦闘機で戦ったり、バラエティに富んでいるようでいて、川尻監督が手がけた過去作品の自己模倣という感がある*1。殺陣も、過去の監督作品で見せた手法を、ほぼ踏襲している。エロティックなシーンも、ただ入れただけという印象で、熱を感じない。
よくいえば、過去の監督作品を最新映像技術でまとめた集大成といったところ。
もちろん、きちんと作中で批判されているように、成長のない主人公は自覚的に描かれている。
その成長のない主人公が、過去とそっくりな出来事にクライマックスで直面し、ほんのわずかな成長をとげる。その最後のひと押しで、無駄に思えた長い旅路も、ほんの少しずつ積み重ねたものがあったのだと、さかのぼって感じさせられた。
冷静に見ればクライマックスでの出来事も類型的な展開なのだが、それより小さくまとまりそうな後だったため、キャラクターの落差が印象に残る。2000年にわたる長い旅も、成長のなさを際立たせる舞台装置として意味があった。