法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『五条霊戦記 GOJOE』

2000年の石井聰亙監督作品。弁慶と牛若丸が出会った五条大橋の戦いを、独自の歴史解釈に基づいた設定で、VFXを多用して描いた。題名に反して、あまり超常的な出来事は描かれない。


正直な感想として、企画は良かったのだが、内容がともなっていない。
WOWWOWが製作しているためでもないだろうが、バストショットばかりの映像は、まるでTVドラマを見ているようだ。せっかく大がかりなオープンセットを作っているのに、映像として面白味がない。逆にセットが終盤で燃やされる映像は良いのだが、五条大橋の炎上はともかく、村の炎上は脈絡がなさすぎる。
殺陣にいたっては、カットを割りすぎて、映像に動きがない。やはりクローズアップばかりで全身が映るカットは皆無に近く、敵味方の位置関係がさっぱりわからない。俳優に殺陣のできない問題があったとしても、もう少し面白味のあるアクションを描けなかったものか。血飛沫や剣戟の火花を合成で描くという、意欲的で先駆的な手法も使われているが、殺陣に工夫がないので飽きてしまう。
たかだか一つの対決を描くだけなのに、2時間17分の尺も長すぎる。五条大橋で戦っていたのは源義経で、弁慶が対峙する側だったという発端は面白いが、それだけ。戦闘を好む牛若丸と常識人に近い弁慶という構図だけなら、マンガ『火の鳥 乱世編』等の先行する作品が複数あり、新鮮味はない。義経と弁慶が同根の「鬼」と化して歴史から消えるオチは良かったのだが、それを活かせる物語構成になっていなかった。