『ウルトラQ』のような短編SFアンソロジーを目指して制作されたOVA。
2話までしか制作されていないが、それぞれのスタッフが合流して制作された『機動警察パトレイバー』の片鱗がどちらからもうかがえる。
第1話は高田明美がキャラクターデザイン、伊藤和典が原案を手がけ、望月智充が監督した。全くの初見なので、しっかり冒頭で『ウルトラQ』や『トワイライトゾーン』へのオマージュをささげたダイアローグがかかげられていたことに驚いた。話数もクレジットされている。
亜細亜堂制作だが、スタジオぴえろ制作の魔法少女作品群につらなる内容。ジャンルは時間SFだが、リリカルな語り口調と、緻密さのないタイムスリップは、ファンタジーのそれ。
しかし、フィルム式カメラが小道具になっているが、今見ても古臭くないところも興味深い。SFとしてのリアリティはないが、同時代の雰囲気をしっかりアニメ作品として映像化しているため、ノスタルジアを良い意味で刺激される。作中では1990年代や2030年代も登場するが、未来的な風景や小道具を全く登場させていないため、現代から見ても違和感がない。
また、後半に226事件を引用して*1、ちょっとしたアクションをはさんだりと、やはり『機動警察パトレイバー』に通じる要素もある。そういえば『機動警察パトレイバー』もOVAやTVアニメでは奇妙な味の掌編が多かった。
作画は当時のOVAとしては良好で、実景を参考にしたとおぼしき風景もしっかりしているが、絵作りの古さはいなめない。226事件のアクションは充実しており、ちょっと菊池通隆風の絵柄になっていると思ったら、やはり原画にクレジットされていた。
第2話は押井守監督が原案と脚本もつとめた。第1話と違って話数のクレジットもなく、映画のように流れるEDクレジットなど、独立した短編映画のような雰囲気を主張している*2。
後に『機動警察パトレイバー』を制作するスタジオディーン制作。しかしスタジオジブリ*3の主力アニメーターが作画を担当し、現在の目で見ても全く映像が古びていない。ジェット旅客機が錦鯉と化す有名な場面だけでなく、汗まみれの主人公など、全編に見所がある。
演出面でいうと、『天使のたまご』で小林七郎*4に学んだレイアウトを演出として活用する方法論が、ほぼ完成されている。人物の影にブラシを使ったり、強い陽光で白っぽく飛んでいる風景など、撮影技法も最初の映画『機動警察パトレイバー the Movie』と全く同じ。実景写真を加工したり、免許証の実物が登場したりと、映画『立喰師列伝』のような手法も使われているが、全体の絵作りがしっかりしているので浮いていない。
物語は一種のタイムループもので、声優のモノローグに力を借りつつも、動きのない30分を楽しませてくれる。最後のオチはどうしようもないが、ナンセンスな絵の迫力があるので、ホラ話として見れば悪くないか。