法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

かくもブラックな沖縄独立論

まず、徴兵制導入の話題について。私のエントリ*1へ直接に向けたのではなく、はてなブックマークへの言及だが。

具体性に欠けすぎていて、誰にどのように反応してほしいのかわからない。Togetterに登場し、なおかつ過去に似た主張を行なっていた人に、何となく思い当たらないわけでもないが。
私に対する反応ではないが、対象になっているTogetter*2と対するはてなブックマークへのコメントも、ついでに難点を指摘しておく。

Togetterの争点は、単純に徴兵制へ反対するか賛同するかではなく、自民党のふるまいが徴兵制導入に繋がる懸念があるか否かだろう。
より狭く、[twitter:@Hideo_Ogura]氏の主な争点に限定するならば、徴兵制導入の懸念を軍事的合理性という論点から否定できるか否かだ。Togetterで最初に使われている下記ツイートで示されている。

しかも、同じように徴兵制に反対しているのだからといって対立することを「敵視」と呼ぶならば、憲法改正草案を基に徴兵制懸念論をとなえた[twitter:@akahataseiji]氏に対して「ブッ」と反応したid:JSF氏こそ、このTogetterでの順序は先だ。ゆえに先に「敵視」と呼んで疑問視するべきはJSF氏に対してだろう。hayohater氏は単に争点を理解しようとしていないだけではなく、自身が主張している争点においてすら不誠実な態度をとっている。
むろん、法律の実務家であるHideo_Ogura氏や政党機関紙の政治部であるakahataseiji氏と、あくまでアマチュアJSF氏の表現における責任は、対等ではないことは注意すべきかもしれないが。


実のところ、[twitter:@hayohater]氏のツイッターは、仮想の「はてなサヨク」を適当にひとまめして批判している時より、真面目なつもりっぽいツイートが読みにくい。
観測範囲の狭さ*3や立論の雑さだけならば流しやすいし、あえて演じているそぶりも感じられる。もちろん本来なら具体的かつ真摯な批判を望むところだが、過去のやりとりから期待はできないと思っている。
それよりも、正しいと思っているらしい土台がゆがんでいることがあからさまになっているのが、見ていて悲しいのだ。このエントリの本題である沖縄独立論もそのひとつ。

上記一連をふくむ[twitter:@jpn1_rok0]氏のツイート群をRTし、「その嘲弄もそれはそれでどうかとは思うが言いたいことはわかるけど」と評し、下記ツイートのようなやりとりをしていた。

「自己責任」や「スジ」という言葉の意味を考える。
たとえば、奴隷が生きのびるために主人の靴をなめる時、主人が「意気がるなら死ぬ覚悟で。生きるために屈辱を選んだなら、その屈辱は自己責任」というのはいいのだろうか。屈辱か死というどちらにしてもひどい選択肢を押しつけつつ、選択したのは奴隷だからと主人の責任は問われないのか。無職でのたれ死ぬよりは良いだろうと、ひたすらサービス残業を押しつけるブラック企業の論理のようだ。
全体に奉仕する利益を優先するよう主張し、個々の権利主張をさまたげようとする抑圧も、ブラック企業に通じるだろう。少数民族や地方に負担を押しつける国政の論理そのものでもある。そうした抑圧は、大多数の国民にも向けられうる。jpn1_rok0氏らには、ニーメラーの詩が聞こえないのだろうか。
hayohater氏らの「一番スジが通る」という考えにしても、奴隷が権利を主張した時に、裸にして放り出す主人は正しいのだろうか。奴隷が技能を持っていないのは全て自己責任であって、教育を受けたり学んだりする手段をさまたげていた主人の責任は問われないのだろうか。蓄財する方法を制限されたり、高利の借金を負わされたり、食費等を差し引かれて給金がもらえなかったりした奴隷が財産を持っていないのは、主人の責任ではないのか。


具体的にいえば、沖縄県の自主財源が25%超である現状に、島の広大な土地を米軍基地に提供し、農地や観光地等に利用することを妨げられている背景などは無関係といえるのだろうか。戦後長きにわたる米軍統治も沖縄の現状を形作った要因とは考えられないのだろうか。物事は現状だけで判断するべきであって、それにいたるまでの過去は、誰も責任をとる必要はないというのか。
また、「地政学」が政治状況を左右すると主張するならば、沖縄県の財政状況にしても「依存心」に原因を求めず地政学的な背景も検討していいのではないか。実際、沖縄県の自主財源率の低さについて、地形的な要因がからんでいるという沖縄県側の主張もある*4沖縄県に負担を押しつけるのは地政学からしかたない、沖縄県の権利主張は自己責任だからしかたない、そういうjpn1_rok0氏の態度は、自説の一貫性すら守れていない。沖縄県に負担を押しつけつつ責任を回避するため、恣意的に理屈をつぎはぎしているだけだ。
自主財源にいたっては、沖縄県は確かに長らく最下位だったが、わずかながら財源比率を上げた近年では全国45位となり、鹿児島県と高知県を上回ったりもした*5
おそらくは選択肢をせばめている側に立っているだろう個人が、おそらくは自身の直接的な利益にならないような出来事に対して、再就職できないことをおそれて辞職はすまいと考えるブラック企業のごとき主張をしている。冒頭でふれたような、抑圧のために徴兵制導入という思考にも通じる。だから、「できるかどうかは別問題として」と他人事のように笑う姿が、無残に感じられてならなかった。

*1:http://d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20120430/1335795210

*2:http://togetter.com/li/295129

*3:http://twitter.com/#!/hayohater/status/173979682675507200のようなレイシズムに基づいた南京事件実在論への評価など、「日本軍最強伝説」というコピペが広く流布されている状況を知らないのだろう。http://d.hatena.ne.jp/D_Amon/20090627/p2

*4:http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-150227-storytopic-3.html【経常収支比率が高率を維持する要因は、歳出の3割強を占める人件費にある。県の資料によると、10万人当たりの県職員数は1497人で、全国平均1173人と比べかなり多い。県総務部は「沖縄は多くの離島を抱え、そこに職員を配置せざるを得ない」と人件費が高い事情を説明する。】

*5:http://www.pref.okinawa.jp/toukeika/100/2007/10/in077.xls