法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

たぶん『劇場版ストライクウィッチーズ』は本質的に戦争を描けない

「なんで劇場版まだ見ていないのにエントリタイトルこれにしたの?」
「いや、たぶん『ストライクウィッチーズ』は本質的に戦争を描けない - 法華狼の日記とか、たぶん『ストライクウィッチーズ2』は本質的に戦争を描けない - 法華狼の日記とかのタイトルの流れで、いきがかり上……」
「すでに考えたことは書ききったんだろ。新作も見ていないのに、あらためて話すことがあるのかよ?」
「最近、複雑なことを複雑なままとらえようとして未整理な長文になりがちだったから、過去エントリを要約する練習をしてみようかと」
「どう考えてもこのかけあい自体が無駄な長文だろ」
「過去エントリをまとめると、1期目が失敗したファーストコンタクト物として作られたから、2期目はファーストコンタクトの成功か不可能性か、どちらかを結論づけるだけで終わる。つまり意思をもった者同士が衝突する戦争を描く尺が残っていない」
「……短ッ!」
「つまり残り1クールも無いということが、エントリでいっていた本質なわけ」
「本質という言葉も安くなったもんだなオイ……しかし要約はいいが、戦争とは何かっていう争点をとりこぼしすぎだと思うが」
「その争点は元のエントリでも、異論はあるだろうけど仮定すると宣言したわけで」
「オイオイ」


「ちなみに、前のエントリは予想を外したというか、期待外れだったというか。まさかネウロイの正体探しと全く関係なく完結するとは思わなかったよ」
ネウロイ同士の衝突と見えた二期序盤の描写が、一期のファーストコンタクト話を全てチャラにする宣言だったとはな」
「考えてみると、もしネウロイ内での対立が主人公を助ける展開だったら、まんま『蒼穹のファフナー』だけどね」
「……ああ」


「ただね、最近にあらためて一期を見ていたら、ふたつ思いついたことがあったんだ」
「ひとつは?」
GONZOは単独だと1クール目しかまともに作れない。2クールがいけるのはAICとかと組んだりスタジオへらくれすに預けた*1時だけ」
「……思い当たるところはあるが、反例も多いぞ。『カレイドスター』とか『スピードグラファー』とか」
「その二作品はスタートダッシュが弱めだし。GONZOが分社化して作った『ベン・トー』や『妖狐×僕SS』も1クールだからうまくいってんじゃないかな」
「ただのバーナム効果だと思うが、それで1クールの『ストライクウィッチーズ』がGONZOらしくない評価になったという主張はわかった。で、もうひとつは?」
「今どき、敵の能力を悪用しようとする人間側勢力が出てこない作品は珍しい。二期目にそうなるかとも思ったけど、ただの対抗策だった」
「……ああ、つまり今回のエントリは『第9地区』を見ての感想か」
「ダメ人間ばかりだからこそ『第9地区』は面白いんだけど、ギャング描写が偏見と見られてナイジェリアで上映禁止にされたって噂も納得できる」
「その上映禁止のソースは、検索した限りじゃ見つからなかったけどな」
「それはさておき。つまるところ『ストライクウィッチーズ』が題材のわりにストレスフリー作品に感じるのは、主人公たちを意思を持って邪魔する者がいないからじゃないかな」
「歴史との距離感は関係ないということか?」
「だってさ、属性的には共感される要素だけで構成されながら、強い意志で主人公をはばみ続けただけで嫌われたキャラクターがいたじゃない」
「いたか? 最近に?」
「作中基準では美少年で、生粋の日本人で、テロに反対で、改革は内部から合法的にという思想で、能力のわりに周囲から低くあつかわれ、敵の姫が数少ない味方で、征服された植民地人で……」
「枢木スザクかよ!」


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「スザクは基本キレイゴトで動くから、卑怯な手段をリアルと考える層から反発されたという要因はあるんじゃないか? 名誉白人っぽさがあからさまだし」
名誉白人っぽい動きをする層が、テロで社会が動くことに反発する層が、当時はスザクにも反発してルルーシュを支持していたと思うよ」
「記憶どころか主観ベースかよ!」
「思いつきだもん。でもさ、意思を持った敵との戦いが視聴者に好まれないといえば、一周して最初に戻ってこない?」
「……そうか、戦争を描けないってだけにとどまらず、意思を持った敵との戦い全般が視聴者に求められていないっていいたいのか」
「だから『ストライクウィッチーズ』が受けたのと、日常アニメが受けたのは、全く同じ流れってこと」
「だが最近の、たとえば『魔法少女まどか☆マギカ』は、意思によって主人公が邪魔される作品だったんじゃないか」
「ほむらや杏子との衝突はデレの前ふりだし。嫌われたQBも解説役であって、いわゆる敵としては終わらなかったし」
「他のヒット作品でいえば『TIGER & BUNNY』はどうだ?」
「中ボス戦もラスボス戦も、物語自体の出来はファンからも評判が良くないじゃん」
「むう……俺は意思を持つアンチとしてのルナティックや、裏切られた過去としてのレジェンドに期待してたんだがな」
「父と子みたいなせまい衝突や、格闘物のように感情で衝突する作品なら、わりと許容されるようではあるけどね」


「あとさ、『ストライクウィッチーズ』ってアニメは同一企画から派生した作品のひとつだから、世界観を完結させるような結末は難しいのかもね」
「……微妙にちゃぶ台を返された気分なんだが!」
「そのへんは実際に劇場版を見てからかな。次回作をにおわせているという話も聞いたけど」