法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『坂の上の雲』第10回 旅順総攻撃

放送時間90分ほとんどを陸上戦闘描写に費やし、現代戦争映画の水準に達する映像を見せてくれた。手を血だらけにしながら鉄条網に肉薄して切断する演技、空中で炸裂し兵士に襲いかかる榴弾の恐怖を描く3DCG、きちんと発射時の反動で後退する実物大モデルの砲、そうした細部のリアルな考証がリアリティを生んでいる。
俳優では柄本明の演じた乃木希典が好印象。どことなく事態を理解できていない様子で、その熱意の薄さが逆にあっさり自決しそうな危うさを感じさせる。これまで見たことのない乃木解釈でいて、説得力がある。顔面の下半分を白髭が覆い、なおかつコスプレのような不自然さもないので、他の配役と比べて役者の素が見えにくいことも良かった。
また、乃木個人に無能な雰囲気を残しつつ、見ていれば日本軍全体に同様の問題があったこともドラマから見てとれた。今回は俯瞰的な語り口が良い効果をあげていたと思う。