法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『デジモンクロスウォーズ』第28話 最終兵器発動!がんばれキュートモン!

米村正二が脚本を、貝澤幸男が演出を担当。
中盤以降、巨大なシュレッダーが中間にある縦孔に舞台を限定しているので、主人公勢力が分散して各々の視点で物語を描きながら、位置関係で混乱することがない。むしろ、上下関係をいかしてキャラクターの心情や立場を暗示する古典的な演出技法がきまっていた。
行方不明になっていた住民達の描写で、一見して過激ではないのに、きちんとグロテスクに感じさせられた演出もいい。深刻な病気の際に用いられると子供でも知っている医療器具、つまり点滴を連想させる拘束装置のデザインが秀逸。


主人公勢力がそれぞれの決意と行動で障害を乗りこえていこうとする物語も、葛藤と成長のドラマとして楽しめた。
特に、敵に操られている住民達を攻撃しない選択をとったり、見捨てるように両親からさとされてなお救うことを選択をする、残酷さと現実主義をはき違えない主人公達の誠実さは印象に残った。それも理想をかかげるだけでなく、限られた手札から最善を選ぼうと考え動いているので、知恵をしぼったアクションとしての楽しみも感じられたし、結末の救いを御都合主義と感じさせない。
そうした行動によって主人公勢力のキャラクター多数が物語にかかわり、無駄なキャラクターが出ないところも良かった。



作画監督は過去の『デジモン』シリーズで美麗な作画を見せた仲條久美で、さすがに前回ほどではないものの作画修正が行き届いている。
さらに今回も冨田与四一が原画にいたが*1、これまでと比べても相当のカット数を担当していると感じた。線をシンプルにまとめ、光と影のコントラストを強調した画面で、迷いのない動きを見せて、強敵を倒すカタルシスを描ききっていた。
さらに後半の、再生したブレイクドラモンの攻撃によって縦孔上層にある市街地が崩れるカットで、虚をつかれて驚いた。

背景美術の画面密度を持ったまま動きをつける手法は、あたかも『ラーゼフォン』での磯光雄デジタルワークスか、一時期の吉成鋼作画を思わせる。普通の背景美術から立ちのぼる煙は手描き作画に撮影効果を足したもので、建物の一部崩壊は3DCGだろうか。このアニメでこういう実験的なカットが見られるとは思っていなかったのだが、誰の仕事なのだろうか。

*1:他にも黒柳賢治他、東映アニメーション関係でのエース級が原画として入っていた。