法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『グインサーガ』雑多な感想

実際に全話を見終わったのはずっと前。原作小説の情報は、噂で聞いた評判と、途中の巻を図書館で斜め読みしたことがある程度。
若林厚史*1監督が全話コンテを手がけると聞いて期待していたほどには作画が良くなかったものの*2、さすがに殺陣はよく組み立てられていたし、サテライト制作ながら作画監督修正はいきとどいていて、ファンタジーの現実感を支える背景美術も美しかった。


物語は、主人公の少年少女が目的地にたどりついて王権を取り戻し、ともに旅をしてきた仲間が三方に別れたところで完結。長大な原作小説のTVアニメ化第一弾としては、さしあたり区切りがいいところだと思った。
主人公達の中では、豹頭のグインが面白かったかな。危機が危機として機能しないほどの戦闘力とカリスマ性を持ち、記憶喪失という安っぽい設定を背負いながら、さほど嫌味になっていない。説教の内容には違和感あることも多かったが、自身の欲望を抑制し、あくまで導く者という立場を崩さなかった。
主人公格の一人でいえば、イシュトヴァーンのように高すぎる目標に実力が及ばず、あがき続けるキャラクターも若々しくて嫌いではない。
他には、権謀術数をはりめぐらしつつ冷静に他人も自分も手駒として利用しつくしたナリスのトリックスターぶりが印象深い。噂に聞いたほど作者から偏愛されているとは感じられなかった。少なくともアニメでは、主人公の少年少女と同じ勢力に所属しつつ対立する敵であり、周囲から絶賛される魅力も少年少女の超える壁を強大にする意味があると感じられた。
いいところがなかったアムネリスも最終回には虜囚となった王族なりに臥薪嘗胆の気概を見せ、続く物語への興味を引く。そのアムネリスをストーカーするだけで出番が終わったような「ゴーラの赤い獅子*3」アストリアスも、お笑い要員としては素晴らしかった。


さて、なぜ今さら感想を書いたかというと、たまたまWikipediaで何人かのキャラクターの未来を知ってしまったから。それなりに描写量があるナリスは実際に読んでみないとわからないが、アムネリスとその侍女フロリーがたどる出来事には驚愕した。いや、ミステリと思って読んだことがある栗本薫作品にも似たような印象は感じていたが……単純にネタバレを避ける意味でも、それ以外の意味でも、読むべきではなかった。
いずれにしても想像以上にドロドロした内容で、もしTVアニメ化するとしても、規制がゆるいNHK以外では難しそうだな。

*1:NARUTO』でコンテ演出を担当した回は、原画に参加した松本憲生の力もあって今も語り継がれるアクションを見せてくれた。若林自身も優秀なアニメーターであり、絵柄こそ不評だったものの『幽遊白書』で見せた黒龍波は印象深い。

*2:井上敦子が原画にいた回くらいか。

*3:この呼び名は、城門で得意げに披露して逃亡兵と気づかれてしまう馬鹿馬鹿しい描写ばかりが印象に残っており、思い出しても笑いしか浮かんでこない。原作ではどうだったのだろうか。