法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

「メカデザイン FOR 1/1 メカニックデザイナー 大河原邦男」展を見に行ってきた

機会があったので、急にいそがしくなった最中に時間をとって行ってきた。
『大河原邦男展@愛媛県美術館』撮影会レポート!: ボトムズBLOG*1
展示の目玉である実寸で制作された鉄製スコープドッグは、すでに様々な媒体で露出している作品だが、間近で見れば質感をともなって凄みが増す。他の実寸プロップと違って、近づいても軽さや安っぽさを感じない。同じく実寸で制作されたザクのヒートホークも悪くなかったが、やはり比較すると弱い。ヤッターワンの実寸鼻先は、これはこれで作品の雰囲気を反映しているので良いのだが。
屋内展示なので天井に届きそうだったり、間近で見ている人との対比で巨大さを正確に実感できたりというところも良かった。設定通りのサイズだからこそ、頭頂部が見えなかったりする細かな差異がアニメ映像との違いを強調する。『FLAG』の映像表現は、やはりこのスコープドッグの存在なくては成しえなかっただろう。


イラスト関係は新作もいくつかあったし、珍しい人物画は楽しめたが、やはり画集等で見たものが多い。デザインという面からしても、大河原以外のデザインが大半をしめている『Zガンダム』イラスト*2を展示しているところは疑問を持った。他にも別デザイナーがかかわっているイラストが多い。正確な説明を展示品につけてほしかった。
また、近年のメカデザインを取り上げるなら、たとえば『BETTERMAN』の覚醒人や『∀ガンダム』のウァッドも取り上げてほしかったところ。『機動戦士ガンダムSEED』よりは少し古いもののリファインではないし*3、大河原デザインの良さが最も出ている新作だと思う。


明らかな展示の不手際として、勇者シリーズから展示された玩具が、いくつか変型を間違えていた。ガオガイガーの胸部ライオンにタテガミがなかったり、ゴルドランの爪先が恐竜形態のままだったり。横に最近のフィギュアが置いてあるので違いがあからさま。
玩具に付属した見本写真や変型説明書には意外と間違いが多いのだが、デザイナー個人の美術展なのだから正確を期してほしかったところ。間違いを誰も指摘しなかったのだろうか*4
一方で、立体玩具展示には大河原以外の玩具進化史がうかがえる楽しさがあった。デザインと玩具の差異が少しずつ埋められていき、徐々に大河原デザイン自体よりプロポーションが最新流行へ近づいていく。


大河原自身が制作した立体造型も素晴らしい。地味に実寸スコープドッグと並ぶ展示の目玉だった。この良さも写真では伝わらない。
ボトムズのデザイン試作造型には良い意味で時代性を感じるし、近年の趣味で作っているSFメカっぽい文房具も精密な作品。ボトムズ胸像などを見れば、いくら制作期間に余裕があることを考慮しても、アニメメカの造形作家としてトップクラスで戦える技術力があるのではないかと感じた。
立体造型は単体のデザインとして見ても評価できる。最新流行のアニメメカデザインから取り残されていると評されて久しい大河原デザインだが、単に適切な活躍の場がないだけではないか。恐竜メカのライトスタンドなど、アンリアルな3DCG映画で動いているところ見てみたくなった。

*1:展示状態がうかがえるエントリを選んだだけで、私自身は写真撮影日ではなく最終日に行った。

*2:ガンダムMk-IIは大河原デザインとされているが、Zガンダム藤田一己百式キュベレイ永野護、ジオは小林誠のデザイン。ガンダムMk-IIも他のデザイナーがかかわっている。当該イラストで大河原がデザインにかかわっているのは、Zガンダムの変型原案と、ガンダムMk-IIだけということになる。

*3:クレジットされていない原案デザイナーがいる。

*4:最終日にもぐりこんだので、私も指摘しなかったが……