法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『PERFECT BLUE』の朝日

終盤のアクションが一段落して、主人公が地面にあおむけに横たわってビル街を見上げるカットがある。主人公の主観カットで、夜明け前の薄暗いビルが精密なパースで描かれる。
そして戦いの終わりを告げるように朝日が昇るわけだが、それをビル街の高いビルの上部だけ明るくなるという映像で表現しているのだ。つまり朝日が当たって明るくなっているわけ。地平線から昇る朝日や朝焼けを描くことなく、夜明けを表現した素晴らしいカットだ。実写でも表現が難しそうな映像だが、アニメの制作技法になれきっていてこそ高度な技術力に驚く。初監督作品でこういう何気ない実験を成功させていた才に改めて感嘆した。
むろん、先例というか足がかりになったと思われる表現は存在する。映画『走れメロス』の結末だ。同様に建造物の頂上だけ陽光が当たり、太陽が沈んでいないことを示すカットが存在する。ちなみに、この映画にも今敏監督はレイアウトとして参加していた。