法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

人類月着陸の事実さえ「今でも議論の最中にある」

毎日新聞が作っていた海外向けサイトが、抗議を受けて閉鎖したという。
http://www.asahi.com/national/update/0624/TKY200806240055.html
あくまで一部署の作っていたサイトであり、たとえば性風俗の記述に関してはポータルサイトiza!で未成年アイドルの水着オーディションを行ったりホスト情報を話題にする産経新聞*1という例もあり、特別に批判するべきか疑問がある。批判も閉鎖も過剰反応ではないだろうか。
産経その他小ネタ0624。 - 黙然日記(廃墟)

 例によって、毎日の反日姿勢がどーたら。この手のくだらない(けど笑える)記事はいずれにしろ世界中を駆けめぐるもので、ただ、みんなそれと承知した上で受け止めているだろうと思います。産経新聞のサイトにも、「世界仰天ニュース」というコーナーがあって、インドでこんなことがあったとか、インドであんなことがあったとか、連日のように掲載されていますが、産経が反インドという批判は聞いたことがなく、むしろ逆ですよね。

妥当な見解だと思う。確かに、海外発の三面記事を新聞海外面で見かけることは少なくない。


もちろん、極端な三面記事ばかり引用されていることで偏見が拡大されないか懸念をおぼえるのはいい。だが「反日」へと結びつけるのは、海外の笑える事件を民族差別に結びつけるような性格だからではないか。
実際に批判まとめWikiで「反日」と表記されている部分を見ると、批判している側にこそ人種的偏見を感じる。
トップページ - 毎日新聞の英語版サイトがひどすぎる まとめ@wiki - アットウィキ

「日本軍は南京大虐殺の集団から、小児性愛家の軍隊に変貌した」
というような反日記事が、毎日新聞のサイトから毎日毎日大量に配信され、それを反日外人や
中国人・韓国人が世界中のフォーラムに転載し、日本人に対する人種的偏見を増幅するための
手助けとなっています。

さらに、問題になっている『まんがで読む 平成17年度版 防衛白書*2の作者、でこくーる氏もブログで毎日新聞サイトの問題について書いていて、ひどく気になる部分がある。
なにそれ!◆ 毎日新聞英語版サイト 「変態ニュース」を世界発信: deco★decocool*3

全部『サイゾー』さんからの引用ということにしている「パールハーバー南京大虐殺の後継である政府省庁」という表現ですが、私はこの表現は今回初めて目にしましたし、個人ブログから各マスコミ媒体までを通観しても、仮にも「新聞社」の名前でこうした今でも議論の最中にあるような内容に関する、扇情的な表現を殊更選択使用するのはいかがなものかと思います。
防衛省さんに正式に謝罪があってもいい表現だと思います。しかも海外に向けて発信しちゃったわけだし。

とりあえず南京事件が「今でも議論の最中にある」という考えは明らかな誤りだ。南京大虐殺は少なくとも存在したことは学問上は明白とされている。日中戦争を専門とする歴史学者に実在を否定する者はいないし、元日本兵士の団体も虐殺の存在を認めているし、もちろん日本政府も公式に認めている。
南京大虐殺実在を前提とした記事を海外に発信して困るのは、自国の戦争犯罪を直視できない、あるいは直視させたくない心弱い人々だけだろう。自国の犯罪を直視したくない歴史修正主義者が、捏造や誤読を続けて定説に難癖をつけ*4、あたかも学説として議論が続いているかのように装っているだけだ*5
旧日本軍と自衛隊に全く連続性がないわけでもなく*6、その過ちを日本政府が公式に認めている以上、政府省庁に謝罪する義務があるほどの表現とも思えない。むしろ、担当した漫画家が南京大虐殺否定論に一定の同調をしていることを明らかにする、結果的には巧い煽り文句だった。もちろん、南京大虐殺を前振りとして記述した人は、この事態は予想していなかっただろうが。


歴史修正主義は正しい学問でないだけに、騙す技術を蓄積しているので、一般人が半信半疑となるのは不思議ではない。しかし防衛庁肝いりで防衛白書のマンガを描くような漫画家が、南京大虐殺否定論を半分でも信じていたりするのは危惧すべきことだ。誤った主張を半分でも信用させれば、歴史修正主義者にとっては勝利となる。
何より、歴史修正主義戦争犯罪の被害者を重ねて傷つける。でこくーる氏は毎日新聞へ事実誤認の訂正等を求めるだけでなく、まずは自分が南京大虐殺否定論に多少なりとも与したことを反省するべきではないだろうか。

んで、単なる漫画家個人のブログなのに「これはあくまでここの部署の問題で、毎日新聞社全体の問題ではないので、ブログに書くな」と強調しているあたりの変な慎重さ(?)がまたすごく馬脚感満点です。


すいませんが、ネタとしてすごくおいしいので書くしかありません。すいません。

書くべきではなかった。注目が集まる時期に慎重な記述ができないのは、今後へ悪影響があると思う。

*1:http://d.hatena.ne.jp/pr3/20061102/1162460938http://www.sankei.co.jp/seiron/koukoku/2000/0004/message.html

*2:http://www1.odn.ne.jp/kamiya-ta/boueihakusyo.html等の評は読んだことがあるが、実作品は見たことがないので個別の論評は避ける。

*3:本題とは関係ないが、引用するなら「そもそも『サイゾー』にこんな内容の記事が掲載されたとも思えない。」などと根拠皆無な憶測を書くJ-CAST記事ではなく、もっとまともな報道記事を選ぶべきだったろう。

*4:もちろん、正しい学問上の手続きにさえのっとってさえいれば、定説を批判することはけして間違った行動ではない。問題は、批判内容がデマゴーグでしかないことだ。

*5:進化論は間違っている、相対性理論は誤っている、等を主張するような疑似科学論者とも共通する。

*6:ちなみに自衛隊内部向け新聞『朝雲新聞』が南京大虐殺否定論記事を載せたこともある。http://azuryblue.blog72.fc2.com/blog-entry-417.html