法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

橋下徹弁護士は常に強い者の味方?

いや、光市母子殺害事件弁護団への懲戒請求を煽った時と、ずいぶん態度が違うと思ったので。


橋下弁護士は、弁護人が職務を遂行することへ異議をとなえ、世論の厳罰化を後押しした。ならば、従軍慰安婦問題において日本政府が批判されている現状も、追認するべきだったのではないか。
弁護団が会見において弁護内容を公表したことについても、被害者感情をおもんばかっていないと批判していた*1。ならば橋下弁護士も、記者の質問に対して日本政府を弁護するべきではなかった。職務として弁護する義務がある弁護人ではないのだから、なおさらだ。
さらに、刑事裁判が続いていたさなかの懲戒請求扇動と、日本政府も一定の加害性を認めた現在という違いもある*2。せめて橋下弁護士は先行する歴史研究くらいは目を通すべきだった。
そもそも、一個人と一国家では、弁護が必要とされる重みが異なる。国家が自身の正当性を証立てる資料を残していないならば、それ自体が批判されるべきことだ。


ただ、きちんと下調べせず、メディアから間接的にえた情報を基にして、専門知に反したという意味では一貫性がある。より強い者の味方になろうとしている態度という意味でも一貫性はある。
思い出すのは、橋下弁護士懲戒請求を扇動していた時のことだ。扇動がおこなわれた媒体や、扇動された人々が、「被害者」を恣意的に利用していると感じられてならなかった。
そうだよ、想像するんだよ - 法華狼の日記

たかじんのここまで言って委員会』は、南京大虐殺被害者の名誉を毀損したような東中野修道氏を登場させ、発言を公共の電波に乗せたことがある。懲戒請求扇動に乗った者の全てが好意的視聴者だったわけではないだろうが、少なくとも番組によって扇動された人々が発端だ。被害者を傷つけるような番組の扇動に乗った人々が、本当に被害者のことを思って行動していたかどうか疑問を持たざるをえない。南京大虐殺は捏造などといった被害者を傷つける主張をしつつ、懲戒請求扇動を支持していた者を見た経験は、実際に一度や二度ではない。

わかっていたことだが、やはり橋下弁護士もまた、被害者の味方ではなかったのだ。

*1:http://d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20070926/1190843895でとりあげた答弁書などで主張していた。しかし当初は、弁護内容を被害者や国民へ説明するべきだと批判していた。http://d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20070906/1189032068で引用したブログ記事や、http://d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20070906/1189032067で引用した毎日新聞記事を参照のこと。その後に弁護団が詳細な弁護内容を公開したのだが、被害者遺族が不快感を表明しているという報道がなされた。http://d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20070923/1190594978

*2:これについては、日本の加害性をできるかぎり否認しようとする安倍政権の宣伝を信じてしまったわけだから、ある意味では橋下市長も被害者かもしれない。詐欺の被害者が加害者になる類型だ。