法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

二重基準で弱者を利用するジャパン vs 一貫して弱者を抑圧するロシア vs ……

ユネスコの記憶遺産に南京事件資料集が登録された件について、自民党が分担金停止を決議したという。
http://mainichi.jp/select/news/20151015k0000m010103000c.html

出席議員も「日本も巻き返しを図るべきだ」として、対抗措置として中国の民主化運動を当局が武力弾圧した天安門事件(1989年)の資料を世界記憶遺産に申請すべきだとの意見も出た。

まず、巻き返しの方向からして見当違いとしか思えない。
独立した相手国の問題点を登録させて、何がどう対抗措置になるのか、さっぱりわからない。そもそも天安門事件で最も被害を受けたのは中国の国民だったはずだ。その意味では二国間問題にはならないだろうが、日本が主導的に登録できるような立場と資料があるとも思えない。
対抗措置をとるというなら、相手の学問的な誤りを指摘するのが正道ではあるだろう。しかし毎日新聞の記事では、一方的な主張ということは前提視されているように読める。

決議では中国について「一方的主張に基づき登録申請を行うのはユネスコの政治利用で断じて容認できない」と批判。ユネスコについても「中立・公平であるべきで、日本の意見を聞くことなく登録したことに強く抗議する」とし、登録撤回の提案を求めた。

別の毎日記事によると、資料をまとめたのは中国らしいとはいえ、登録された内容は東京裁判が参照されているようだ。
http://mainichi.jp/shimen/news/20151011ddm003040064000c.html
さらに同記事では、日本や第三者国の資料も多いと指摘されている。この資料を一方的と否認するハードルはきわめてたかい。

<1>国際安全区の金陵女子文理学院の宿舎管理員、程瑞芳の日記

<2>米国人のジョン・マギー牧師の16ミリ撮影機とそのオリジナルフィルム

<3>南京市民の羅瑾が死の危険を冒して保存した、旧日本軍撮影の民間人虐殺や女性へのいたずら、強姦(ごうかん)の写真16枚

<4>中国人、呉旋が南京臨時(政府)参議院宛てに送った旧日本軍の暴行写真

<5>南京軍事法廷が日本軍の戦犯・谷寿夫に下した判決文の正本

<6>南京軍事法廷での米国人、ベイツの証言

<7>南京大虐殺の生存者、陸李秀英の証言

<8>南京市臨時(政府)参議院南京大虐殺案件における敵の犯罪行為調査委員会の調査表

<9>南京軍事法廷が調査した犯罪の証拠

<10>南京大虐殺の案件に対する市民の上申書

<11>外国人日記「南京占領−目撃者の記述」(新華社通信から)

一方的な主張と自民党がいうならば、せめて対抗できる資料を用意できていなければおかしいわけだが、日本は敗戦時に多くの資料を隠滅してしまった。
なぜか約30万人という犠牲者が多すぎるという主張ばかり広まっているが、反証できるような確固とした統計資料を日本はつくらなかったし、のこさなかった。


一方、記憶遺産にシベリア抑留資料が登録されたことについて、政治利用だとロシアが日本を非難したという。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20151015/k10010270361000.html

ロシア政府のユネスコ委員会のオルジョニキゼ書記は14日、ロシア国営通信に「ロシアは日本に対し、登録の申請を行わないよう働きかけたにもかかわわらず申請が行われた。日本は2国間で解決すべき政治問題をユネスコに持ち込んだ」と述べ、日本が「記憶遺産」を政治利用していると批判し、今後、外交ルートを通じて適切な対応を取るとしています。
また、中国が申請した「南京事件」を巡る資料の「記憶遺産」への登録については、「中国国民の悲劇は理解できるが、同じようなことは多くの国にあり、2国間で解決すべきだ」としています。

このロシアの主張には、日本とちがって一貫性はある。国策の被害者によりそうならば唾棄するしかない一貫性だが。


どちらの立場を選ぶべきかは悩むまでもない。ロシアと日本、ふたつバツをつけるだけのこと。それがオトナになるということのはずだ。