前回の続き。
まずは細かい作品の指摘をざっとしていく。
2007年 中割り(作画の底辺部分の役職)と塗り絵の一部をしただけで、
完成版の映像を自分達が作ったように見せかけDRマークを付け配信
http://www.drmovie.biz/production/sample_movie/reel3.wmv
下請け作業を立派にこなせば、それを仕事として誇るのは当たり前の話。
逆に実際の制作は下請け会社にグロス*1出しし、監督等の中心スタッフはフリーランスを使いながら作品を制作したと誇るような場合もある。サンライズのように同時に複数作品を作る会社や、ガンジスのように著作権管理を主とする会社に多い。
2004年 天上天下(2話) DRと書かれた紙で穴を塞ぐシーンあり
『天上天下』はマッドハウスの下請けを長く続けていたDRムービーが、最初から制作に深く関わった作品。制作中の様子を韓国アニメ事情と絡めてNHKがドキュメンタリーを作ってすらいた。実際に各話のスタッフをながめても、作画監督まで韓国側で行った回が多い。
自社の受け持った原作付きアニメキャラをモブやパロディで登場させる会社*2が人気をはくしている昨今、二文字くらいの遊びも許容できないとは病的な嫌悪感だ。
ちなみに、この作品は日本国内の下請け会社で作画した回もあるが、むしろ韓国でていねいに作業した回よりも悪い出来だった。日本の会社でも、スケジュールやスタッフによっては韓国以下ということが珍しくない。
2004年 バジリスク 原画から異臭。カット中にビューティフルJOの設定混入
露骨に手抜きした下請け作業をする(日本人作画監督に嫌がらせ)
『バジリスク』についての情報源はアニメーター石野聡の日記からのようだ。石野聡氏の公式サイトや周辺情報を見るとわかるのだが、そもそも周囲への悪口辛口は彼の人の芸風である。
たしかに異臭や設定混入などは好ましい状況ではないが、カリスマ*3アニメーター井上俊之も原画によくコーヒーの染みをつけている。
PA works Anime Runner
Q23:どうして原画用紙にいつもコーヒーの染みが?!
A23:いつもコーヒーを飲みながら仕事をしているから。(うっかりものだから)
つまるところ制作工程のミスにすぎず、韓国だから起きたという状況ではないし、反日工作などと考えること自体が愚かしい。
ちなみに『バジリスク』とは、山田風太郎原作せがわまさき漫画を、GONZOがアニメ化した作品。アニメーター互助集団のスタジオへらくれす関係スタッフが制作の要所をしめ、平均して高いクオリティを保った。GONZO作品らしからぬ原作の良さが活かされた佳作。
アニメオリジナル要素が強い1話が象徴するように、良い意味で頭の悪いアクションで楽しませつつ、それでいてスムーズに情緒あふれるドラマに移行して落とす構成が見事。全体を良い話としてしめくくることで、一回見て忘れるのではなく、物語を反芻して楽しめるように一歩深く作られている。内容的にも二つの超人忍者集団があい争い、引き裂かれる男女の悲恋という流れがある。こうした作品を民族差別に利用してしまう視聴者が不思議でしかたない。
もっとも、意欲的なアニメファンド作品でありながら商業的な成績は良くなく、知名度他いろいろと残念な作品であった。
(続く)