ヘリコプターが向かうサンフランシスコのビル群のなかに、ひときわそびえたつ138階のビルがある。グラスタワーだ。
 世界最高のビルとして完成したタワーだが、予算削減のためさまざまな手抜きがおこなわれていることを設計者がオーナーに抗議していた。
 そして紳士淑女を集めた落成式がはじまるなか、漏電による火災が階下で発生。事態を甘く見たオーナーは落成式を続行しようとするが……
ジョン・ギラーミン監督による1974年の米国映画。よく似た高層ビル災害小説*1を映画化しようとしていたワーナーと20世紀FOXが予算節約のため合作し、ひとつの大作映画として完成させた。
 まさか2時間半超えで休憩なしとは。ただ異変の発生が当時の大作映画としてはけっこう早く、開始15分くらいで最初の火災が発生する。その火災はほとんど気づかれないまま延焼していき、それと並行してタワー完成記念のパーティーをつかって群像劇を展開していくわけだが、そこから火災発生が発覚してもいったんパーティーをつづけるところが逆にすごい。同じ建物で火災が発生しているとわかっているのに緊張感に欠けた行動をとることで逆説的な緊張感が生まれている。
 火災が延焼していく中盤の展開は単調で、開始1時間半くらいたつと映画が終わってもいいのではないかとすら感じる。しかし後半から工夫された救出劇がはじまるので緊張感がもちなおす。おおきくわけてふたつのアイデアで火災に対峙するわけだが、このアイデアはふたつの原作からそれぞれ引いたものらしい。ただ近くにも高層ビルがあることは序盤から何度も映し出されているが、タワー最上部に水のタンクがあることは終盤でようやく説明がある。水をいったん最上部にくみあげてから使用しているという会話を序盤に入れたり、火災後にも水道がつかえることに疑問をもった登場人物への説明で最上部のタンクの水がなくなるまでは使えるといった会話があれば、クライマックスの伏線になったと思うのだが。
 合成やミニチュアはけっこう見事。超巨大なビルのミニチュアを作っただけはあり、炎も水もスケール感を損なわず、合成などで見ててさめるような粗はない。ただビルのミニチュアの全景はほとんど使わず、爆発などはけっこうカメラを寄せて撮影しているので、逆にそうした場面用にもっと縮尺の大きい部分ミニチュアを使って全景ミニチュアは2mくらいですませば予算が節約できたのでは、と思ったりもした。
 シネマスコープで映しだされるモダンな撮影もあまり古さを感じさせない。パーティー服は現代と変わりがないし、タワーの監視システムは電子装置だったりする。時代を感じるのは監視カメラのモニターがブラウン管なところと、消防車のデザインだけ古いところくらい。
*1:国立国会図書館デジタルコレクションでふたつとも無料公開されていた。 タワーリングインフェルノ - 国立国会図書館デジタルコレクション そびえたつ地獄 - 国立国会図書館デジタルコレクション
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