法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ゴーストバスターズ』

ニューヨークの図書館に幽霊があらわれ、超常現象を研究していた男三人組が幽霊退治の専門家を名乗って活動をはじめる。
とんとん拍子に成功していく三人組だが、以前に依頼を放置した女性のもとで大異変がはじまり、役人による妨害もあって……


アイバン・ライトマン監督による1984年の米国映画。ポップな音楽に乗せてSFX満載のアクションホラーコメディが展開される。

何度か地上波TVでの放映を断片的に見たが、2016年版のリメイクを観る準備として、はじめてDVDで全体をとおして視聴した。


CG技術が映画のビジュアルを飛躍させる直前、アナログなミニチュアと合成に満ちた幽霊描写は楽しい。
巨大セットとマットペインティングでビル街が描かれ、コミカルなゴーストともども薄っぺらでライトな世界観が完成されている。
キグルミとミニチュアで描写されるマシュマロマンは、重量感と巨大感で同時代同技術の東宝特撮を圧倒。


ここで興味深いのが、近年にはじめて見た観客が「CG」と思いこんで感想を書きがちなこと。下記サイトなどで複数確認できる。
ゴーストバスターズ - 映画情報・レビュー・評価・あらすじ・動画配信 | Filmarks映画

音楽やCGの80年代感良い。

分かりやすいストーリーだったし、分かりやすいCGだった笑笑


ラストの戦闘シーンはもはやそのCG感すらおもしろかったわ笑

CGとかセット感凄いけど逆に良い🙆‍♀️

陽気な音楽と拙いCGから80年代感が滲み出ている。昔のCGって白い枠線があったよね、

CGがCGの役割果たしてない感じすごく好き。

80年代の映画感がすごいwこの頃のCGってまだ凄い違和感あるなー

CGの出来はかなり悪く、普通に着ぐるみ使って撮影したらええのに。。って思うシーンが何回もありましたね。最後らへんのマシュマロンが出てくるところ背景の透過が失敗しててちょっと身体消えてて草生えました。

念のため、事実誤認をあげつらいたいわけではない。オプチカルプリンターをつかった光線やモンスターの合成が、発展途上のCGくらいには見える技術力を、これらの感想が逆説的に証明している。
実際に後半でモンスターがビルの外へ飛び出て道路を横切るあたりは、アナログな質感と実景への精緻な合成で、今見てもかなりよくできている。


しかし物語はテンポの良さ以外、まったく笑えなかったし感心できなかった。
はじめてCMで寸断されないノーカットで視聴したのだが、想像と違って主人公トリオが成功していくプロセスは描かれない。女好きクズなピーターとマジメ眼鏡なイゴンというキャラクターがわかるだけで、超常現象研究家たる説得力もない。
序盤はインチキなテレパシー研究を描いただけなので、実際に超常現象に対処できる技術や見識がいきなり出てきても納得しづらいのだ。たとえば不真面目なピーターと対比するようにイゴンの真面目な研究を並行して描いて、ついでにレイモンドのマシュマロマン愛好の伏線を入れるような導入にしてほしかった。
コメディ演出が、敵も味方も主張を一方的に押しつける滑稽さばかりなのも、好みではない。他者に敬意をいだくのは、活躍するトリオを無責任に応援する大衆だけで、メインキャラクターは誰も彼も最後まで自分勝手。最後にニューヨークが大好きだと主人公が叫んでも説得力がない。
ピーターの女性好きの長所と短所をほりさげて成長するわけでもなく、女性は基本的に外見だけで評価される。黒人の助手もさして存在意義がない。わりきって幽霊退治の電話番をする女性ジャニーンとイゴンの恋模様は良くなりそうだったが、少し描写されただけでクライマックスとは関係なく、そのまま成就などせずに映画が終わる。
物語の障害がないので、お化け屋敷を順路どおり進むようにテンポよくイベントが起きて、最後まで画面に集中することはできたのだが……