1980年代の米国西部の荒野に、複数の死体が転がっていた。何らかのトラブルがあって犯罪者たちが殺しあったらしい。そこに転がっていたカバンのなかから大金を見つけた男は、それを持っていこうとする。そして銃撃をかいくぐり、現れた追跡者たちをふりきったかと思ったが……
コーエン兄弟による2007年の米国映画。2008年のアカデミー賞で作品賞など複数部門に輝いた。
内容としてはブラックコメディじみたクライムアクション。さすがに米国西部も1980年には警察権力が定着したはずだが、ひとりのサイコキラーじみた追跡者をほうりこむことで西部劇的な追跡劇と銃撃戦を展開していく。
麻薬取引の衝突で全滅したところに出会って、たまたま大金を手にして逃げ始める男。出会う人々にコイントスをしかけたり、ためらわず邪魔者を殺していくし一度決めた対象は利益がなくても殺していく男。祖父の代からの保安官で二人の男を追いながらナレーションを担当する男。展開の密度と人間関係に良い意味で2010年代の韓国映画っぽさがある。
特に追跡者の殺人鬼だけは、この映画の登場人物で特異的に現実感がないことで、逆に何らかの寓意を背負っているようにも感じられる。未解決事件サスペンスのサイコな連続殺人犯のようであり、アメコミのヴィランのようでもあり、運命にしたがって見逃すこともあるところは契約を重視する悪魔や死告天使のようでもある。
ほんの少し前の時代を舞台にしているところも、軍事独裁政権時代をよく舞台にする韓国映画らしい。ビンテージカーや当時のファッションをそろえ、メキシコとつながる税関はプレハブ作りのオープンセット。流血の陰惨さと断面を大写しにはしない上品さのバランス、カーチェイスこそないが次々にアクションで廃車になっていくビンテージカー。
しかし最後の妻と殺人鬼の会話などのアクセントもふくめて、濃厚でいて見やすい娯楽活劇としてよくできすぎていて、どこが評価されてアカデミー賞作品賞に輝いたのかが逆によくわからない。
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