法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『相棒 season22』第13話 恋文

 亀山美和子に5通のラブレターが匿名で郵送される。歓喜する妻に微妙な雰囲気になる亀山薫だが、刺殺された若い男が美和子宛ての手紙の封筒をにぎっていたことで予想外な方向へ動いていく。刺殺された若い男は、絵描きの行方不明になった妻をさがすことに協力していたのだが……


 神森万里江脚本で、謎めいた文章におどらされる男たちの迷走を描く。展開のテンポが良すぎて、手がかりを必ずしも画面にきちんと映していないことは残念だったし、ほとんど見えすいた構図の事件かと思いきや、終盤の展開はおもしろかった。 
 若い男を刺した凶器の先端が菱形という特徴と、絵描きの妻が失踪する前に何者かと浮気していたという情報から、ほとんど殺人事件の真相は明らかといっていい。事実、特命係は迷うことなく真相にたどりつく。
 登場人物が少なすぎて、浮気相手が絵描きのパトロンだった画廊ということも自明に近い。


 しかし現在の殺人事件の真相を手早く解明してから、過去の失踪事件の位置づけが二転三転するところはおもしろかった。
 浮気した妻を殺したわけではないし、妻が長袖の服を着ていたのは家庭内暴力によってではない。妻をしたっていた若者を絵描きが殺したのは、現実があばかれるからではなく夢想がこわされるからにすぎない。
 そんな何もしなかった絵描きに対して、さらに特命係が画廊の正体をつきつける。ヤクザの抗争に巻きこまれて事故死したというご都合主義が、実際は伏線だとは思わなかった。指摘されてみると画廊の行動と妻の性格にそった人間関係であり、納得感もある。
 この終盤を見ながら思い出したのが某アニメ映画だ。妻探しを「生きがい」と語る絵描きの時点で連想したが、残された絵の文章という小道具も似ている。あるいは着想元だったりするのかもしれない。