法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『岸辺露伴は動かない』(7)「ホットサマー・マーサ」

新型コロナ禍で取材ができなくなったことに岸辺露伴はいらだつ。それでも他人と対面する時はウレタンや布ではあるがマスクをつけて、ひさしぶりに外出すると、不思議な神社に迷いこんだ。祠のなかで、気づくと三ヶ月がたっていたが……


年末の恒例となった荒木飛呂彦原作のNHKドラマ。超常能力で他人の記憶をのぞいて漫画のネタにする主人公が、自分以上に奇妙な出来事に直面していく連作物語集。
www.nhk.jp
今回は『ドラえもん』の「タイムワープリール」*1を思わせる序盤から、悪意とは少し異なる謎の存在のなりすましを展開しながら*2、漫画家と編集者の緊張関係というテーマに一貫性をもって物語が着地する。『ミザリー』のようでそうならないところが、ホラーというより奇妙な味ジャンルに近いこの作品らしい。
しかし冒頭のVR体験は直後に取材ができなくなって実感できなくなる痛みを描くための準備でしかないことは期待外れだった。死を実際に体験したいが実行すると漫画が描けなくなるという主人公のボヤキから、てっきり自分になりすましした存在を超常能力で死に誘導して、その内心をやはり超常能力で確認する展開になるかと思ったのだが……いや、なりすます存在によって体験をうばわれるという意味で、新型コロナ禍ともども本筋の伏線にはなっていると解釈するべきか。

*1:hokke-ookami.hatenablog.com

*2:展開の構成が2021年の『世にも奇妙な物語』の一編と似ている。 hokke-ookami.hatenablog.com