芙羽の両親にイースキ島の新名物をつくってほしいと、マイラ王女がたのんできたという。そこで芙羽は一家でイースキ島へ移住するようもちかけられる。悩みながら友人に話した芙羽は歓迎されるが、葛藤のなかにあった……
伊藤睦美脚本、土田豊演出、上野ケン作画監督。作画は相当に良好。序盤は修正がゆきとどいているだけかと思ったが、菓彩がお茶をこぼすカットで等身高めにシャープな線なのに無駄をそぎおとすデフォルメをしていて目を引く。
さらに、芙羽がベンチでたそがれる場面に舞い落ちるイチョウの葉が、リピートとはいえ作画アニメらしい作画で思わず身をのりだした。何らかの素材を利用しているのかもしれないが、レイアウトもふくめて絵作りが良い。煽った構図で顔の下半分に影が落ちている描写も、内心がひきさかれる葛藤をよく表現していた。
アクションも順当に良いが、戦闘の風圧でローズマリーの髪の毛が乱れて、戦闘後も整えていないままな描写に味がある。
物語については、芙羽がレギュラープリキュアである以上、両親の引っ越しについていく可能性が低いことはメタな観点から判断できてしまい、どうしても視聴者にとっては茶番感が出てしまう。ただイースキ島から出張する想定を見て、全世代にスマートフォンがいきわたったSNS時代、そろそろ日本各地や世界に住んでいる子供たちがプリキュアとなり、メタバース的な空間に集合して戦うようなシリーズが出てきても面白いかもしれない、などと思った。
そう考えていたら、芙羽は両親に対して、友人とともにいたい気持ちだけでなく、両親とともにイースキ島の料理をてつだいたい気持ちもあると語ったことにおどろいた。佐藤順一が映画『ユンカース・カム・ヒア』で提示した、良い子ではないことの肯定を思い出す。そして母だけが出張してタブレットごしに家族がリモートで食卓をかこむ結末も、それを肯定的に描くところが現代的だと思わされた。