法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

問題行動を起こしておいて名前を出さないでほしいと願うなら、なぜ個人を特定できるハンドルネームを何度も出すのだろう?

「名前を出さず引用したコメントを批判するのは自由だけど、名前を出して批判的に引用するなら許可がいる」「いや逆だよ?!」 - 法華狼の日記

批判の正当性を示すためには、批判対象と比較して第三者が確認できる状態にするべきであるし、批判された側も自身の正当性を示したいなら望むところであったはずだ。

上記エントリへ、下記のような反応がはてなブックマークであった。
[B! 引用] 「名前を出さず引用したコメントを批判するのは自由だけど、名前を出して批判的に引用するなら許可がいる」「いや逆だよ?!」 - 法華狼の日記

id:Shiori115女性差別的な文化を脱却するために」とか謳うターゲットがめちゃくちゃ広いものに、わざわざ個人名を何度も出す必要無いよね?という話です。引用がどうのの話を私はしていません

id:Snail 論点がまったく違うと思うぞ。オープンレターに個人名が連呼されていたら、個人攻撃だとみなされる可能性があるわけで、個人攻撃が目的でないなら、ワザワザ無駄な危険を犯す必要ないよねという話。

冒頭のエントリは引用の要件についてだけ語っているのではなく、読んでのとおり「匿名」と「晒し」の意識などについても言及している。


そして、複数回の個人名の例示が個人攻撃とみなされる可能性があるというなら、ちょうど気になっていることひとつがある。
自己の問題発言を発端とする問題提起に個人名を出すことが不当だとうったえた呉座勇一氏が、個人名を一度も出していない別の問題提起*1へ反論したエントリだ。
日本歴史学協会に対する訴訟提起について - 呉座勇一のブログ

日本歴史学協会の主張(女性関係以外)を見ると、何をもって差別と主張しているのか理解できないものばかりです。

例えば、著名なベテラン歴史研究者(教授)への批判を「立場の不安定な研究者」に対するものと強弁しています。

性的指向、宗教、信条、年齢、学歴・職歴、身体的特徴、障碍、病歴、犯罪歴、犯罪被害歴といった、一般に差別の対象と考えられている属性について、日本歴史学協会は私の差別発言を指摘していません。

しかし一読して、日本歴史学協会がリストに入れた「立場の不安定な研究者への揶揄・中傷・差別的書き込み」は、「職歴」への差別にふくまれるのではないか、と疑問に思った*2
そしてその項目でハンドルネームが5回登場している北守氏*3は「ベテラン歴史研究者(教授)」ではないはずだが、それについて差別と理解できないとする根拠を呉座氏は出していない。
過去の過ちを認めないかのようなエントリに対して、当然のように当事者から「私への謝罪は撤回されるということでよいのかな?」という疑問も出された。

リプライを見ると、呉座氏の代理人をつとめる吉峯耕平氏が登場し、「陰口で卑怯であった」という謝罪は維持しつつ、「あらゆる社会的弱者に対する差別行為」という争点で否認していると説明していた。


こういう事態になってから申し上げても何もかも手遅れですが、お詫びさせてください。」

今回の訴訟は、あらゆる社会的弱者に対する差別行為があったかどうかが争点になっており、日本歴史学協会が、その例として貴殿に対する発言を例示しています。
呉座としては、陰口で卑怯であったという謝罪を撤回するものではございません。

なお、貴殿が希望するのであれば、ブログ記事からは貴殿の通称を削除させていただきます。

この説明で北守氏自身は自身については理解を示しており、ハンドルネームの削除も不要と回答している。
しかし問題提起の発端であることを隠すよう願う呉座氏の立場なら、相手の意向を確認するまでもなく、揶揄の対象にしていた個人は匿名化するべきではなかったか。
そもそも裁判で争うなら、差別ではないと主張して揶揄を再公開する必要もあるまい。差別どころか問題発言ではない、といった賛同を引きだしてしまえば、二次加害にもなりかねない。
もちろん上記のように、具体的に例示されたことで、当事者が疑問を発して説明を受けることができた。個人名を出す意味もあることを認めなければなるまい。

*1:日本歴史学協会 - 歴史研究者による深刻なハラスメント行為を憂慮し、再発防止に向けて取り組みます(声明)

*2:また「ポリティカル・コレクトネス」は「信条」にふくまれるだろう。

*3:はてなアカウントはid:hokusyu。また、他の人物の実名を出した揶揄もそのまま掲載されている。