呉座勇一氏を支援している労働組合委員長のブログエントリを読むと、女性差別の認識は危ういものを感じる - 法華狼の日記
上記エントリでとりあげた新世紀ユニオンの委員長ブログにリンクされている「日本の自立と平和をめざす市民連合」という別ブログを見て、悩んでしまった。
日本の自立と平和をめざす市民連合
桜をあしらったヘッダーがなかなか危うい雰囲気をかもしだしている。
内容は時事問題の論評が多く、日本軍国主義批判を主張しつつも反米ナショナリズムが強い。
たとえば沖縄県の基地問題について、保守派でもなかなか見かけないような蔑視的な主張をおこなっている。
日本の自立と平和をめざす市民連合 沖縄県は基地負担を口実にした強請りを止めよ！
日本は自国の防衛を自分の力で行うべきであり、その為には自立しなければならない。しかしこの選択は沖縄の人達には年間８００億円の地代収入を失うことになる。沖縄が「反基地」を口にしながら実は基地存続を願っているため、ゆすりたかりの「県民運動」になっているのである。
社会の犠牲者が満額回答を求めて権利をうったえることを、仮にも労働組合関係者が「ゆすりたかり」と表現して良いものだろうか。
韓国への差別感情をむきだしにした記述も多く、世界遺産にまつわる歴史認識問題にはじまり、金大中大統領も知らないのかと思うようなエントリもある。
日本の自立と平和をめざす市民連合 韓国の嫌がらせ外交が招く災い！
この国はノーベル賞受賞者が日本がたくさんいるのに、韓国は一人も無く、何であれ日本に劣等感を持ち続けてきた。
女性差別ともかかわりが深い日本軍慰安所制度についても、最初から賠償はされず償い金のうけとりも拒絶されたことや*1、追及を逃れられなくなってから日本政府が対応した順序*2、挺身隊という言葉のもつ広い意味*3や慰安婦と混同された時期の古さ*4も誤認している。
日本が戦後日韓基本条約時に戦争賠償金を支払った事から、因縁を付けるたかりゆすり外交を展開してきた。従軍慰安婦も３０００人前後いたことは確認されており、それゆえ日本政府はお詫びして一人５００万円の償い金を支払った。それがあだとなって韓国政府は２０万人の性奴隷なるものを「女子挺身隊問題」なるものとしてでっち上げてきた。
他にも、「日本人の優秀性から、二か月足らずで全国民の半分にワクチンを接種するのは不可能ではないと思う」という根拠で、東京五輪中止を社説でうったえた朝日新聞を非難したり、いろいろな意味でひどいエントリが多い。
日本の自立と平和をめざす市民連合 社説で五輪中止の決断を求めた朝日の愚劣！
こうした見識が団体交渉にまで悪影響をもたらすとは必ずしも思わないが、呉座氏はもう少したのむ相手を考えても良かったのではないかとは思えてくる。
*1:償い金を拠出したアジア女性基金側の記述でも、日韓基本条約時に謝罪や賠償という形式はとられなかったことなどが明記されている。 各国･地域における償い事業の内容-韓国 慰安婦問題とアジア女性基金
*2:軍関与資料が発見され朝日新聞に報じられる直前の日本政府の見解は、関与そのものを全否定するものだった。 従軍慰安婦の強制連行を狭義にとどめない問題意識は、1990年以前から確実に存在していた - 法華狼の日記
*3:こちらで紹介した外村大氏の文章を参照。 自民党参議員の山田宏氏が弾圧しようとしている百科事典ポプラディアの記述は、おおむね歴史学的には妥当と思われる - 法華狼の日記
*4:こちらの冒頭で、朝日新聞の報じた吉方べき氏の発見を紹介している。 木村幹氏が吉方べき氏に剽窃されたと主張している件についてメモ - 法華狼の日記
