法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ちっちゃな雪使いシュガー』雑多な感想

 古い煉瓦造りのミューレンブルクという街で、少女サガは祖母と二人暮らししていた。学校と仕事を行き来する毎日のなかで、楽器屋においているピアノを弾かせてもらうことが救いだった。そんなサガの前に、音楽を奏でることで天候を制御する妖精シュガーがあらわれる。季節使いと自称する妖精たちはサガにしか見えなくて……


 2001年から全24話で放送されたTVアニメ。 美術監督にベテランの小林七郎をむかえ、木村真一郎が監督し、J.C.STAFFが制作した。

 ブロッコリーのイメージキャラクター『デ・ジ・キャラット』で人気だったコゲどんぼをキャラクター原案にむかえ、そのTVアニメを監督した桜井弘明が企画監修。ブロッコリーも製作に参加している。


 ひさびさに見た第1話は記憶以上に名劇感がある*1。背景をきちんとマルチでわけて奥行きがあるように動かし、その階層をフルショットのキャラクターが越える描写で空間に立体感を生んでいる。単純に複数のロケハンをやっただけでも、小林七郎の美術にたよったわけでもない。DVDブックレットのインタビューによると、そもそも実際にやるまで小林はロケハンの必要性を感じていなかったらしい。
 当時は珍しいフルデジタル作品だが、テロップにジャギが散見される以外は現在でも違和感が少ない。色彩も落ちついているし、描線もくっきりしすぎていない。キャラクターデザインを担当した川嶋恵子のDVDブックレットインタビューによると、小さな妖精がとびまわる企画において、スライド方向の自由さと、現在でいう拡大作画のやりやすさが効果的だったという。
 しかし当時は繊細で描きこまれたキャラクター作画と思っていたが、現在の目で見ると意外と簡素。だが逆に、黒目とハイライトの白に虹彩が二段という4色だけで、ちゃんと透明感のある瞳になっているキャラクターデザインも、それを成立させている作画の安定度に感心した。第1話が川嶋恵子による作監で、第2話と第3話が同じ作監という少数精鋭で画面が成立している。TVアニメはこれで必要充分ではないか。
 物語は、終盤を知ってから見るとグレタのクローゼットレズビアンぶりが初回から満ちている。シリーズ構成のやまだやすのりのDVDブックレットインタビューによると、シュガーとサガの本筋にこだわっていたところに監修らによって追加され、結果的に終盤の重要キャラクターになったという。そんな後づけキャラクターとは思えないほど、現在でいう悪役令嬢*2のような存在感があった。第9話から始まる別キャラクターの意図せぬレズビアニズムも、その伏線として機能していると感じられた。

*1:プライムビデオでは有料だが、バンダイチャンネル等では無料配信している。 ちっちゃな雪使いシュガー #01| バンダイチャンネル|初回おためし無料のアニメ配信サービス

*2:実際の原典には微妙に定義から外れるキャラクターがオマージュ的な作品において具現化するという意味で、現在の「悪役令嬢」につながるキャラクターといってもいいかもしれない。 「悪役令嬢を探して」第1回:「乙女ゲームの悪役令嬢」は実在するのか? 90年代乙女ゲームから悪役令嬢を見出してみよう