法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『世界まる見え!テレビ特捜部』ウソかマコトかSP!

木村昴などがゲストの2時間SP。今回はミニコーナーもふくめて目新しい映像が多くて、純粋に良かった。
カナダの企業が開発した、光を屈折させて背後にある物体が見えなくなるフィルムなど、ボケてはいるが迷彩としては充分で、動物の監視などに役立つかもしれない。
動物たちも通常はどこかで見かけたものが多いが、枯草細工にしか見えないサルオガセ・ツユムシは初めて存在を知ったし、カラクリ細工のような動く姿も印象的。


人工衛星で地球を見下ろして発見をするという話題でも、インドの丸いロナール湖がクレーター跡というのは予想できるし、気象衛星がとらえた謎の動きは列車だったとして、残りがどれも考古学的に興味深い。
トルコとシリアの国境で発掘された石造遺跡は、衛星写真から数百メートル四方の広大さが判明。それは紀元前9500年のもので、チグリスとユーフラテスの間にあることや、残された二つの石柱をアダムとイブに見立てることで、エデンの園だという説がとなえられる。
さらにヨルダンにのびる謎の長大な線。第二次世界大戦で上空を飛んだパイロットの証言もある謎の遺物で、その正体は石が帯状に散乱しているというもの。地上から見れば普通の荒野と区別が難しく、石も大地にまぎれてしまっただろう。防護壁という説は石が少なすぎて否定され、境界線を区別するための目印説が有力とのこと。石器時代の石斧が発掘されたことから、先述のエデンの園の一万年をさらに超える十万年前の遺跡という可能性も出ているという。


南米の国境警備コーナーも、今回は税関ではなく国境で警備する部隊も紹介していて、情景的に目新しかった。広大な砂漠を監視するためドローンを使ったり、ジープのような警備車両がぬかるみにはまるトラブルがあったり、面倒な国境検問所をさけて砂漠をとおってただけの何も問題がない一般人がいたり。


動物が恩人となったエピソードをいくつか紹介。犬ゾリのリーダー犬がクマに襲われた主人を助けに戻ったり、動物園の檻に転落した幼児をゴリラのボスが守るような動きをしたり。
獣の安易な擬人化は避けるべきだが、どれも偶然を超えて確かに人助けをしている光景には見えた。彼らには人間が同種のしたがうべき主人か、守るべき子供に感じられたのだろう。


ハリウッド富裕層の邸宅から金品を盗みだした高校生の顛末も、一種のクライムドラマとして楽しかった。パリス・ヒルトン*1は関係者の犯行と主張し、ブリングリング窃盗団と名づけられ、虚像が大きくなったがために、正体がただの高校生とは誰も気づかない。
監視カメラに姿が残されても、犯罪歴などないので手がかりにならない。高校生が油断して普段からアクセサリーをつけるようになって初めて友人が気づく始末。それでも最初に逮捕できたのは青年ニックひとりで、相棒の女性レイチェルは姿を隠し、さらにニックも釈放される。最終的にニックが自白するため出頭して仲間の情報をつたえなければ、もっと事件はつづいただろう。
しかし身体を傷つけるような事件ではなく、パリス・ヒルトンも盗難に長期間気づかないような超富裕層がターゲットで、高校生たちにくだった刑罰も懲役4年から2年という短さ。誤解を恐れずにいえば痛快な物語にしたてることも難しくない。
実際に検索してみると『ブリングリング』というタイトルで2013年に映画化ずみだった。ソフィア・コッポラ監督作品。

ブリングリング [Blu-ray]

ブリングリング [Blu-ray]

  • 発売日: 2014/07/02
  • メディア: Blu-ray


第二次世界大戦の各国のバカ兵器も紹介。コウモリ焼夷弾の写真や鳩ミサイル、パンジャンドラムの実験映像、ヒトラーの女性化計画など。主として実行には移されなかっただろう連合国側の武器を紹介。
枢軸国側の兵器が紹介されなかったのは、笑い飛ばすにもつらすぎるからだろうか。実際に日本のバカ兵器は、動物どころか人間の生命を粗末にしたものが多すぎる……
ビビる大木がそういう愚かな時代だったとコメントしたのが、意外な良さがあった。


最後に頭にザルをかぶった人々について紹介。推測どおりスパゲッティモンスター教と教徒パスタファリアンをめぐるドキュメンタリーだったが、手際よくその文脈と広まっていく経緯が説明されていた。
家の宗教と距離をとるためにパロディ宗教を選択する若者や、証明写真の自由を拡張するために裁判まで開く人々。ただ安全圏から宗教を揶揄しているのではなく、それなりに切実で、かつ現実の社会運動としてとりくんでいる。
日本のパスタファリアンは、同じように裁判を起こしたり、仏教の冠婚葬祭と距離をとることができるだろうか。日本社会側の問題としても、運動が本気になったとたんに蔑視しそうな印象があるが……

*1:スタジオでツッコミを入れられていたように、玄関マットの下に鍵を隠していたセキュリティ意識には首をかしげた。数億円のアクセサリーを置いているのだから監視システムくらいまともに設置しておけば、そもそも犯行がはじまりさえしなかったのではなかろうか。