主人公の先輩である香久矢まどかは、文武両道の令嬢にして、「観星中の月」とたたえられる生徒会長。そんな香久矢が先日に見かけたフワに不審をいだき、星奈たちに接近してくる。実は香久矢の父親は政府の仕事として異星人の調査をおこなっているのだ……
村山功シリーズ構成の5連続脚本で、まず序盤のプリキュア4人が出そろった。
まず、公的機関が序盤から存在感を出してくるところがシリーズで初めて。それでいてプリキュアをリアルな存在として描こうとするのではなく、メンインブラック陰謀論的なオカルト世界観をつくりだしている。こういう作品全体のスピリチュアルっぽさは好ましく思えないのだが、オルタナティブを描く手段として採用した意図は理解したいとも思えて、悩ましい。
それはともかく、そんな公的機関をプリキュアの父親がひきいている設定からのストーリー展開はよくできていた。少女がはじめて父に対して秘密をもつという一種の自立のドラマを完結させつつ、いつか真実を語るためにプリキュアとして活動したいという結末を見すえた目標へむすびつけた。
そこで目を引いたのが冒頭の弓道だ。矢を的中させたばかりの香久矢の背後から、父親が賞賛の声をかける。まだ残心を終える前から声をかけることで、父が娘の成績のみ注目するような人物とわかる。一方で娘は父の言葉に反応せず残心をつづけることで、父娘の一方的かつ不全なコミュニケーション状態が映像を見ているだけで実感できる。
コンテは志水淳児。初期劇場版の監督を担当したりしたベテランだが、演出が良かったと感じたのは初めてだ。あまり奇をてらわないカットを積み重ねるタイプの演出家なのだが、それがわかりやすさを優先して絵作りしている今作にあっているのかもしれない。
先述の弓道場面は、ひとつひとつの所作をていねいに再現して、芝居としての面白味を出しつつ、台詞がない時間の長さを強調していた。香久矢を正面からクローズアップするカットが多く、主人公をふくめた他のキャラクターは遠近法で小さく作画され*1て背後から語りかける場面が目立つところも面白い。香久矢が今回の事実上の主人公であることと、そんな香久矢に正面から向きあう人間がほとんどいないことが、よく映像だけで表現されていた。
作画監督に爲我井克美が入ったこともあり、過去の登板に比べてきらびやかさは抑えているものの、画面がよく整っていた。アクション作画も中抜きした枚数少なめの動きが、キビキビと決まっていて心地よい。
あと、意外と良かったのが初めての3人同時変身。
前回は良さを感じなかったキュアソレイユだが、画面いっぱい使ったシンプルな動きが、分割された小さな画面で見映えする。玉状の液体に手足をつっこむカットが使われていないので、画面の動きを止めてテンポも悪くしていた問題が解消された。
逆にアニメーターに優遇されているキュアミルキーが、小さな画面だと細かな動きが見えづらくて、結果として他2人とのバランスがとれている。
変化がなくて残念だった歌詞も、3人の合唱になると雰囲気が華やいで、また違う印象が生まれた。