法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』ようこそ!ハリボテの城へ/おばけ口目の怪事件

今回は前後とも後期原作から。それもただ秘密道具の活用方法で物語を動かすのではなく、多視点でドラマが進行する群像劇を見どころにしている。


「ようこそ!ハリボテの城へ」は、映画撮影のようなセットを思い浮かべるままに作れる秘密道具が登場。それで作りあげた空間で、しずちゃんと先生を別々に騙そうとするが……
映画マニアの原作者らしいモチーフのエピソード。複数の人間を同時に騙すため、どこでもドアを活用して3ヶ所をドラえもんが行き来する奮闘劇としても楽しめる。しかし、庭木なども板で表現するという描写は、アニメになると説得力がなさすぎてマイナス。立体感が必要な樹木や、水を使う空間については、現実の映画セットを参照して裏側を見せてほしかった*1
内容としてはほぼ原作に忠実で、映像化としての不満は少ない。はっきりアニメオリジナルなのは、最後にセットが崩壊するコントのような場面くらい。これも描写としては悪くないが、家具まで絵というのは劇中人物を騙せたことに説得力がなくなるのでマイナス。天井が落ちてこないことも不思議だ*2のび太の側だけ壁が倒れるという描写でいいだろう。


「おばけ口目の怪事件」は、スネ夫ジャイアンの周囲に小さな災難がふりかかる。のび太ドラえもんも首をかしげるが、ついに出木杉が異変の正体を目撃する……
原作と同じく、語り口で読者を騙していくトリッキーなエピソード。秘密道具が後半でいきなり登場することは謎解きとしてアンフェアなので、なんらかのアニメオリジナル伏線を入れてほしかったが、全体として原作に忠実なので不満はない。
導入で雨を降らせて、原作よりもホラータッチを強調したアレンジも好み。ただ残念ながら腰繁男コンテ演出は表現が淡々としていて、脚本段階で意図しているだろう不穏さが充分に出ていない感もあった。謎めいた出来事に頭を悩ませる前半の不安感などもふくめて、今回はサスペンス描写が得意な演出家に担当してほしかったかな。

*1:樹木は移動できるよう根元がスタンドになっているとか、排水はホースからタンクにつないでいるとか。

*2:映画のセットで天井を作らないことは多いが、今回のエピソードは本物と騙さなければならないため天井までセットで作っている。