法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『HUGっと!プリキュア』第20話 キュアマシェリとキュアアムール!フレフレ!愛のプリキュア!

プリキュアになろうとする愛崎とルールーだが、変身アイテムのプリハートは残りひとつだけ。
ふたりは悩みながら、先にプリキュアとなった薬師寺と輝木に教えられていくが……


前回につづけて坪田文シリーズ構成による脚本で、佐藤順一シリーズディレクターがコンテ。すでにCM等で露出していたキュアマシェリとキュアアムールが登場する。
物語としては、シリーズ定番の新プリキュア登場を大きく逸脱するほどではない。さりげない良さをつみかさねる佐藤コンテも、今回のようなスペシャルエピソードではもっと奇をてらってほしかった。
作画もかわいらしいが、変身バンクをのぞいて演出の要求にとどいていないところが散見された。薬師寺が湖に足をふみいれている場面など、もっと撮影効果をこらして、鏡面反射を精緻に作画すれば、ぐっと良くなったろう。


予想外だったのは、今回は薬師寺と輝木が変身しなかったこと。ルールーと愛崎が戦うことが、そのまま俳優オーディションやフィギュアスケートの現場で戦うふたりの応援歌になる。
それぞれの場所で懸命に進みつづける先輩ふたりが、激しくアクションする新プリキュアふたりとシンクロし、そのエモーションがドラマをもりあげつつ、プリキュア活動がすべてに優先する必要はないと示す。
主人公の野乃すら変身しなかった回*1が序盤からある今作ならではの、自由な展開だった。


もうひとつ、設定レベルであらためて興味深く感じたのが、主人公たちよりさらに幼い少女とアンドロイドが新プリキュアになったこと。
よくよく考えてみれば、育児をモチーフのひとつにしている今作の根幹に、新プリキュアはひとつのアンチテーゼをつきつけている。思い出したのが今敏監督によるTVアニメ『妄想代理人』第8話のメインキャラクターの関係性。
妄想の八「妄想文化祭」 -その1- - KON'S TONE

サブタイトルの意味だが、「明るい家族計画」というのは避妊具(コンドーム)の有名なキャッチコピー。

「かもめ」という子は初潮すら来ていないような少女であり、「冬蜂」は智恵はあるが生殖能力を完全に失ったような老人であり、「ゼブラ」は生殖能力 が横溢するような健全きわまりない男性に見える外見だが皮肉にも「ホモ」である、というイメージであった。

一見、円 満で楽しそうな関係でありながら、ここからは「何も生まれない」という皮肉が込められたタイトルであった。

一方でプリキュアは、たがいを愛し愛されることによって、少女ふたりが新たな力をえた。社会によって非生産的と指弾される関係が、その関係を肯定することそのものが、いまを生きる支えとなる。