法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』めいわくガリバー/のび太のなが〜い家出

今回は後期原作らしく題材から距離をとったエピソードをアニメ化。


「めいわくガリバー」は、今ごろガリバーの絵本をはじめて読んだのび太が、小さい人間が住む星へ行って活躍しようとする。しかしあっさりたどりつくまでは良かったが……
2011年と、比較的に最近にアニメ化されたエピソード。もともと風刺譚だった『ガリバー旅行記』が子供向け絵本で脱臭されたところを、『ドラえもん』で元の風刺性をとりもどしたといえる*1
ほぼ物語は原作に忠実。アニメオリジナル要素は途中で森に住もうとした場面や、急須から注がれる緑茶で小便を表現する小技くらい。のび太が歩きまわる街のディテールや、小人のカートゥーンのような動き、小さな海鳥や魚の泳ぐコップなど、作画の良さが素直に活用されていた。


のび太のなが〜い家出」は、のび太が例によって家出を決意。しかし18時までには帰りたいという。ドラえもんは時間を長く体感する秘密道具を出してやるが……
声優交代があった2005年にアニメ化したエピソードの再映像化。登場人物も舞台設定も普段の範囲内で、今回のアニメ化でも特に気をてらったことはしていないが、主観的な家出の長さから悲嘆にくれるママをていねいに描写。人情劇らしくもりあげつつ、周囲との落差で笑いを生む。
ちょっと驚いたのが、アニメーターとして参加しつつ2017年からはコンテも担当しはじめた岡野慎吾*2が、絵コンテとキャラ設定だけでなく脚本でもクレジットされていること。原画も、作画監督を兼任する吉田誠と大武正枝の二人原画で、今回は良い意味でアニメーターが主導権を握っている感があった。中途半端なアレンジで流れを壊さないことで、絵の良さがそのまま好印象を生んでいた。