2022年に公開された磯光雄監督第2作。第1話だけやや長い、各30分の全6話アニメとしてネットフリックスで独占配信され、前後編にわけて劇場公開もされた。
宇宙に出ることが技術の最先端の特別な夢ではなく、富裕層が民間で体験できる資本主義的な位置になった現在の視点で*1、資本主義的に改装された宇宙基地におけるサバイバルとAIの進化を描く。オリジナルSF作品として、監督は原作だけでなく設定考証にも入り、全話の単独脚本、共同絵コンテに、各話で作画や撮影にも入った。
キャラクターデザインとして『交響詩篇エウレカセブン』の吉田健一をむかえた。しかしもともとこだわりの強いアニメーターらしく監督は映像の細部まで自身の意図をとおそうとして、絵コンテを基準に作画するよう指示。時間がなくなった後半は監督の絵コンテを吉田健一に清書させることでレイアウトにしていたという。
まず前半3話は、子供たちばかりのサバイバル劇として独立して楽しめる。
現在の若者にとって宇宙は特別な興味関心をひく場所ではない。そこで宇宙基地でサバイバルをおこなう子供は、大企業のキャンペーンに当選して資本主義的な承認欲求につきうごかされる配信者たちと、資本主義の最先端として地球外で生まれて見捨てられかけている少年と少女のふたり。
大企業にはらいさげられてゴテゴテとカラフルに改装された宇宙基地は、キャンペーンに当選した見学者を受けいれるが、実は緊急時の装備は不充分なまま。それがサバイバルの危機を演出し、序盤で印象づけたカラフルな装飾が位置関係を表現する。宇宙基地の全体像はよくわからず、今どこにいるのか視聴者には明示されないのだが、全体の状況がわからない子供たちが目の前の危機をひとつひとつ乗りこえる物語なので問題ない。
現代的な布製の柔らかい隔壁や、本格的な宇宙遊泳はできない布製の宇宙服などで、藤子F作品のような手ざわりある個性的な宇宙生活をデザインしつつ、無力な少人数によるギリギリのサバイバルを作りだす。移動をつづけることでアニメーションの見どころも多く、情景も変化しつづけて飽きさせない。
さまざまな思惑から衝突や利用するなかで連続する危機に対処しながら、子供たちが距離をたもちつつも協力していく。そして信頼できる大人と連絡をとれる状況にたどりついて前編にあたる前半3話が終わる。シンプルなサバイバル劇として完成度が高い。
そして危機発生時の大人たちの視点から後半がはじまり、背景的に語られていた過去のAIの暴走事件が前景化して、生存のためAIの制約をはずしていく。そもそも宇宙で生まれた少年がAIをハックして制約をはずしていたのは、医療的な危機にある自分たちの命をつなぐためだった。
さらに前半で背景的ににおわされていたテロリストとのアクションを挿入。無重力の狭い舞台で立体的なアクションを見せるが、子供たちだけでテロリストと互角の戦いをおこなわせるためのバランス取りを前半3話のサバイバル劇におりこんでいるため、アニメーションだけにたよらない駆け引きでも楽しませる。アノニマスをモデルにしたとおぼしき理想主義者の、演出がかったように狂的でいて真面目さもあるバランス感覚も他にない。
そして磯監督が別名義でメカニック作画監督を担当したアニメ映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』のような対立を現代的にまとめて終わる。ほとんど台詞だけで物事が進行する局面は一昔のアニメ最終回の定番とはいえ、映像作品としてどうかと思った。ただ、まるで『機動戦士ガンダム』のニュータイプのような心象イメージ表現を、作品独自の設定を利用して成立させたギミックは面白い。人類を生存させるため人間ひとりひとりの命を軽視するAIとの問答に、基本的人権という概念をもちださないところは首をかしげたものの、最終的な結論は前向きすぎることもなく、技術的な手段でさまざまな問題の先送りを成功させた。技術による救済の重視は、良くも悪くも古いSFのようだと感じたが*2、そのおかげで娯楽としてのまとまりは悪くない。
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