法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『どぶ鼠作戦』

日中戦争時の最前線で、日本側の特務隊をひきいる白虎と、中国側で密偵隊をひきいる無双がわたりあっていた。
八路軍につかまった関大尉をさがしに、白虎は個性的な4人の新しい部下とともに敵地へ潜入する……


1962年公開の岡本喜八監督作品。『独立愚連隊』シリーズの3作目だが、物語や設定を共有しているわけではない。

映像は横長の東宝スコープだが、106分と短い尺のモノクロ作品であり、大規模な衝突よりもスパイ合戦を中心に描いているので、あまり大作っぽくはない。
ちなみに私が鑑賞したDVDは、爆発などの効果音に比べて台詞の音が小さく収録されていて*1、かなりボリュームを上げないと聞きとれなかった。


娯楽作品らしく、オマツリにかこつけて危機を脱する東宝らしい展開があったり、中国軍のそれなりに大規模な襲撃があったり、日本側の空爆でオープンセットを爆破したり、活劇らしい見せ場と緊張感はとぎれない。さまざまな場所でのドラマが同時進行するプロットの複雑さもあって、観賞中は楽しかった。
しかし残念ながら群像劇にしても話がとっちらかっていて、結末も釈然としない。1作目の重い清々しさや、2作目の軽い清々しさのような心地よい後味がなかった。
なんといっても、中盤まで好敵手のように堂々とふるまっていた無双が、説明もなく心変わりして、ただの敵として終わってしまった顛末がピンとこない。しんがりを強いられた特務隊が、逃げだしたり知恵をはたらかせるのではなく、ただ敵へ突入していく結末も納得できない。騙しあいのリアリティレベルにあわせて、もっと軽やかに戦争と距離をとったドラマとして見たかった。